2022.04.05 太陽光サミット2022 適地確保や地域との共生課題普及推進の担当者ら、対策語る
講演する資源エネルギー庁の潮崎室長
太陽光発電に関連する企業などが集結した展示会「太陽光サミット2022」(主催=DMM.com)が3月30日~4月1日にオンラインで開かれた。太陽光に絞った展示会としては2回目。発電システムなどを手掛ける100を超える企業が出展したほか、関係者らによるセミナーも開催された。30日には太陽光発電の推進を担う担当者らが現状や今後の課題を説明した。
基調講演に登壇したのは、資源エネルギー庁の潮崎雄治再生可能エネルギー推進室長。国内での課題や対策などを解説した。
世界3位の導入量
潮崎室長は国内の再エネ全体の導入量に言及した。水力発電を除く発電電力量は2012年に309億kWhだったが、19年には3.4倍に当たる1056億kWhに増加。ドイツ(1.7倍)や英国(3.2倍)などと比較した上で、「日本はかなりのスピードを持って導入を進めている」と指摘した。太陽光は中国や米国に次ぐ世界で3番目の導入量(19年実績)だという。
国土面積当たりの太陽光導入量は、日本が1平方キロメートル当たり147kWで世界最大。国内には少ない平地面積で見ると同426kWとなり、「世界の中でも抜きん出て高い」(潮崎室長)という。ドイツの2倍以上に達しており、適地の確保を課題として挙げた。
課題浮き彫り
太陽光の急速な拡大は、そのほかの課題も浮き彫りにしている。その一つが地域との共生だ。
潮崎室長は、エネ庁ホームページの情報提供フォームなどに、16年10月~21年7月に地域でのトラブルとして738件の相談が寄せられたことを明らかにし、「地域住民の懸念が顕在化している」と語った。
具体的には、発電所を囲む柵や塀、標識が未設置だったり、メンテナンスが十分に行き届いていなかったりした点を住民らが指摘したという。地元住民への理解が十分得られていないまま事業が進められていたケースもあった。また、土砂崩れでパネルが崩落したり、景観を乱して設置された例などもあり、不安が寄せられたという。
自治体と連携強化
対策として国は、柵や塀、標識の設置を17年に義務化。事業計画策定のためのガイドラインに、住民との適切なコミュニケーションを努力義務として明記した。さらに条例などの先進事例を自治体間で共有する情報連絡会を18年に設置。随時開催するなどしてきたことを説明した。
再エネに関する条例を持つ自治体は16年度には26だけだったが、20年度には5倍を超える134自治体にまで膨れた。例えば、愛知県岡崎市では事前に市長との協議が必要。岐阜県中津川市では利害関係者などとの書面での協定締結を義務化しているという。
こうした事情から自治体との連携強化も進めている。事業者から国に再エネ固定価格買い取り制度(FIT)の申請があった段階で、立地自治体側にも事業者名などの情報を提供する対応を21年から始めた。
潮崎室長は「再エネ発電事業の初期段階から自治体が必要に応じて関わることが重要だ」と強調。稼動している太陽光発電の位置が一目で分かるマップ形式にして自治体側に情報提供するなどの工夫も始めた。
一方、太陽光発電協会の増川武昭企画部長は「太陽光発電の今とこれから」と題して講演。「太陽光発電は必ずしも順風満帆ではないが、課題を克服しながら、ますます競争力を高めていくと確信している。FITから自立し、将来的には国内で300GWを超えるほどに導入して、カーボンニュートラルを達成したい。太陽光にはそれだけのポテンシャルがあり、価値がある」と訴えた。