2022.05.25 【次世代自動車用部品・材料特集】電子部品・材料製品動向

車載高容量用途向けの導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサー

回路部品

ECU搭載点数増で小型化要求、高性能・高信頼性も求める

 回路部品は、CASEを見据えた新製品開発が活発。特にADAS(先進運転支援システム)/自動運転技術の高度化やxEVなどに照準を合わせた技術開発に力が注がれる。

 最近の自動車は、自動運転に向け、ADASなど安全系の機能強化が進展。ECUの搭載点数が増加し、小型化も進んでおり、コンデンサーや抵抗器、インダクターなども車載グレードでの小型化が要求されている。

 ADAS/自動運転技術の高度化では、通信品質を向上させ、安全性を高めることが必要。このため、車内ネットワークの高速化、高周波化に対応し、ノイズ対策部品も小型・高性能品の開発が進展している。

 ミリ波レーダーユニットなどでは、小型化のために高密度実装対応が求められ、回路基板は高周波回路と一般制御回路を同一基板に形成するハイブリッド基板がMSAP(モディファイド・セミ・アディティブ・プロセス)工法を使って製造されている。小型部品で回路構成することでユニットの大幅な小型化が追求されている。

 xEVは、動力にモーターを使用し、コントローラー(制御装置)、発電機、インバーター、二次電池、DC-DCコンバーター、充電器などがモーター駆動関連の重要構成要素となる。こうしたパワー系ユニットで使用される電子部品は、高温環境、振動・衝撃など自動車特有の要件への信頼性が強く要求される。

 アルミ電解コンデンサーでは一般的な電解液タイプに加え、最近は導電性高分子アルミ固体電解コンデンサーや、導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサーの新製品開発が活発化。コイル、トランス関連は信頼性の高いIGBT用絶縁トランス、ハイパワーで高性能の電流センサー、高効率のリアクターやチョークコイルなどの技術開発が進展。抵抗器は高信頼性のハイパワータイプ、低抵抗のシャント抵抗器などが搭載される。

 いずれも、SiCやGaNなどの新しいウエハー材料を用いた高耐圧、高周波、高効率でスイッチングするパワーデバイスの技術トレンドに沿った新製品開発に力が注がれる。

接続/変換部品

コネクターはCASEに照準、スイッチ/タッチパネルは次世代HDMI対応

車載用小型高速伝送コネクター

 接続部品は、CASEに照準を合わせたコネクターや、次世代HMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)に対応するスイッチ/タッチパネルなどの開発が活発。

 コネクターは、車の高機能化に伴うデバイス搭載量増加に対処するための省スペース化や、高速伝送対応、大電流/高電圧化などが求められ、これらに対応した高品質・高信頼性コネクター開発が進んでいる。

 ADAS/自動運転用途で重要な車載カメラは、車1台当たりの搭載個数増に加え高性能化が顕著で、これらの高速デジタルセンシングカメラ向けのカメラモジュールコネクターや、カメラEUCインターフェースコネクターなどの新製品開発が進む。各社は高画素車載デジタルカメラで要求される3ギガbpsなどの高速伝送性能を実現しつつ、小型・高性能で防水性にも優れた製品開発に力を注ぐ。

 電動車用は、車載インバーターやモーター、バッテリー周りに使用される大電流/高耐圧対応製品の開発が活発。定格850V対応品などが開発されている。

 EVの本格普及では、1充電当たりの走行距離向上が重要。このためEV用部品は軽量化ニーズが強く、小型・軽量の車載ECU用コネクターなどの開発が進む。エンジンルーム周辺等の用途向けに、125/150度対応の高耐熱FPCコネクターなども開発されている。

 スイッチは、安全を重視した使い勝手の良い操作スイッチの開発が進む。高級車向けは静粛な操作音、滑らかな操作感触の発現なども重視される。タッチパネルは、操作性や安全性の観点から、フィードバック機能付きの開発が進展。加えて、ディスプレーモニターの大画面化や曲面化トレンドに対応するため、静電タッチパネルの大画面化や曲面対応への技術開発が加速している。

 音響部品では、将来の完全自動運転車での車室内のリビングルーム化に対応し、車載スピーカーの薄型・軽量化追求や車載専用ヘッドホンなどの開発が進んでいる。

 次世代自動車を巡っては、電動化なども後押しして、小型・軽量化や耐熱性向上といった課題解決に資する材料が求められる。中枢となるパワートレインの樹脂化などの研究開発が盛んに行われている。

 一例としては、モーターとインバーターを一体化した電動パワートレインの需要が高まっている。これに合わせ、ほかの産業分野、例えば半導体封止材などで培った樹脂技術を適用して、材料・製品開発を進める動きもある。

材料

小型・軽量化や耐熱性向上、パワートレインの樹脂化なども

 炭素繊維複合材料(CFRP)といった複合材料も注目されている。設計の時間短縮や、コスト低減につながる生産技術に各社が取り組んでいる。バイオプラスチックやリサイクル材の動きも盛んだ。

 また、車体など構造に加えて、センサーやカメラをはじめ車載デバイスが増えるのに伴い、ワイヤハーネス、ケーブルも一段と重要になっている。導電率の高い銅が従来は一般的だが、軽量化にもつながるよう、ルミニウムに置き換える動きも進む。

 車載でも第5世代移動通信規格5G関連などと同様に、電磁波シールド・ノイズ対策も課題になっており、それに貢献する材料開発も盛んに進んでいる。また、アモルファス合金などの素材も注目されている。

 さらに、電動車の航続距離を長くするには電池の性能向上が求められる。リチウムイオン電池(LiB)をはじめ、電池材料の開発の動きも活発化している。

 ただ、レアメタルの需要が高まるのに伴い、資源の枯渇や高騰が懸念されており、また、資源の調達が特定の国・地域に偏ることによって、各種の地政学リスクが顕在化し、高まっていく恐れも指摘されている。

 それだけに、全固体電池向けを含め、新しい材料開発とともに、使用済みの電池から必要な原料を取り出すリサイクルの態勢整備の面にも力が注がれている。国のプロジェクトでもリサイクル関連が採択されており、実証も進みそうだ。

 富士キメラ総研の調査では、車載用LiB向けの需要が好調な代表格である放熱ギャップフィラーの場合、2025年の世界市場予測は565億円と20年比で2.3倍になると予想される。低硬度で柔軟性を有する液状放熱材料。発熱部とヒートシンクの隙間を埋める機能がある。自動車向けの採用が大半を占める。

 また、車載用ミリ波レーダーのレドームに使われる樹脂なども伸びている。自動運転レベルに応じて1台当たり1個から5個が搭載されているレーダーは今後、搭載率の上昇に加え、1台当たりの平均搭載個数が増加が見込まれ、これに伴って材料の需要も伸びていく見込み。