2022.06.03 【エコファースト企業~環境の日~特集】計測器の動向電力変換効率や電池性能評価が必須

脱炭素の実現にはパワコンやインバーターの評価が重要に

 計測が脱炭素社会の実現や環境分野に果たす役割は大きい。

 自動車分野は電動化が進展。トヨタ自動車がハイブリッド車を含む電動車の販売目標を800万台に引き上げたのを機に、国内でもいよいよ「脱ガソリン車」への機運が高まっている。自動車業界の計測課題に応えるソリューションの提案が活発だ。

 電動化の実現には、モーター、インバーター、バッテリーなど各コンポーネントの電力変換効率や電池性能の計測・評価診断を行うことが欠かせない。

 PCU(電力制御ユニット)とモーターに起因するエネルギーロスを評価し、開発に生かすことが電動車の性能改善と電費効率向上につながる。高電圧大電流で高速スイッチングが行われるノイズ環境での高精度な計測が要求される。

 EV(電気自動車)向けリチウムイオン電池の増産投資が続き、工場新設の動きも目立つ。電池材料やセル、モジュールパックまでの品質を評価する際に電力計や電流センサー、バッテリーテスター、インピーダンス測定器などが使用される。

 ADAS(先進運転支援システム)の進展で高速化する車載ネットワークの評価も必要だ。

 電動化に伴い車両に搭載するECU(電子制御ユニット)の数も増えており、モーターやバッテリーモデルを実装して、ECUの実機をテストする「HILS」が活用される。蓄電池の最適な充放電や安全制御を行うバッテリーマネジメントシステム(BMS)にHILSを用いてバッテリーの劣化や充電の状態を模擬する。

 自動車のインバーターなどに使われるパワー半導体、SiCやGaNなど次世代半導体の電圧・電流の特性評価に広帯域・高分解能のオシロスコープや半導体カーブトレーサーが有効となる。

 脱炭素社会に向けたエネルギーの有効利用や再生可能エネの活用でも、計測制御技術を活用した電力系統の安定化や電力品質の確保が不可欠だ。

 直流電源やスイッチング電源は太陽光や風力、燃料電池、VPP(仮想発電所)やスマートグリッド(小規模電力網)の実証試験などに用いられ、電力計はインバーター、モーターの電力を計測。太陽光発電の点検には高電圧用プローブと現場測定器が使われる。

 パワーコンディショナーやUPS(無停電電源装置)の開発現場には、パワーHILSが大電流や大電圧を制御するパワー回路を模擬し、電力変換やモーター制御の改善に生かされている。