2020.02.06 東京で九州の「レクサス」工場見学 小学生がデジタル技術を体感
東京都内の会場から自動車の製造工程を学ぶ小学生たち=東京都港区のレクサスインターナショナルギャラリー青山
ANAHDのアバターロボット活用
映像通信技術を駆使し、東京都内に居ながら九州にある自動車の製造工程を学べる―。
トヨタ自動車の高級車ブランド「レクサス」を展開する社内カンパニーのレクサスインターナショナルとANAホールディングス(HD)は、距離の壁を超えて工場を見学する機会を提供。デジタル技術で社会科見学を革新する可能性を示した。
「工場見学型デジタル授業」と銘打ったイベントの舞台は、レクサスインターナショナルギャラリー青山(LIG青山、東京都港区)で、1月下旬に実施。近隣の学校に通う小学5年生84人に、トヨタ自動車九州の宮田工場(福岡県宮若市)で行われるレクサス車の製造の様子などを紹介した。
活用した技術の一つが、インターネットを通じて遠隔操作できるANAHD開発のアバター(分身)ロボット「newme(ニューミー)」だ。
同工場に併設されたPR館に無線LAN(構内情報通信網)を設けて、ニューミーを接続。ネットでPR館とLIG青山に結び、会場のディスプレイには、現地職員がニューミーととともに車づくりへのこだわりなどを紹介する様子が映し出された。
例えば、内装のステッチ(縫い込み)やドアが閉まる音に焦点を当て、クイズを挟みながら解説。児童たちはノートPCを使い、PR館に置くニューミーの操作にも挑んだ。
児童たちは、同工場の第2組み立てラインも見学した。現地からの中継では、360度カメラで撮影する全天球映像をライブ配信しながら音声通話も実現するソフトバンクの「全天球映像通話システム」のほか、遠隔地にいる人とコミュニケーションできる凸版印刷のウエアラブルデバイス「IoA(インターネット・オブ・アビリティーズ)ネック」が使用された。
工場内には、IoAネックの装着者や説明員らが乗車し、360度カメラも取り付けたカートが潜入。児童たちは製造現場の映像に釘付けになりながら、「部品の数」や「完成車の検査工程」などに関するクイズ形式の説明に熱心に耳を傾けていた。参加した男子児童の一人は「そこまで行かなくても見れるから便利と思った」と感想を語った。
デジタル授業の狙いについて、レクサスインターナショナルで国内マーケテイングを担当する沖野和雄室長は「モノづくりの現場には奥が深い魅力が詰まっており、そこに興味を抱いてほしかった」と強調。全国約170ある「各店舗に同様の取り組みを広げ、車ファンの増加につなげたい」とも述べた。
「今後は複数台のアバターを活用し(工場内の)各工程を自由に動けるようにするなど体験価値をあげていきたい」と、ANAHDアバター準備室長の津田佳明氏。高画質な動画を円滑に見られる次世代高速通信規格「5G」もデジタル授業の進化を促す可能性は高く、授業を支えた映像通信各社の展開から今後とも目が離せない。