2020.03.04 【ICT展望2020】日本事務器・田中啓一社長

田中社長

「やってみたいIT」顧客と取り組む

 ―景気動向は不透明ですが、ICT市場は働き方改革、デジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル変革)が追い風になっています。市場動向をどう見ますか。

 田中社長 ICT市場は、働き方改革やDX、さらに消費税軽減税率対応もあって順調に推移している。今後も多くの企業の新たなビジネスへの挑戦が増えると思われ、それにITは欠かせない。

 しかしそこには、「やらなければならないIT」と「やりたいIT」があり、その実現に向けては従来通りのプロセスでは進めない。

 全く違うアプローチのための筋肉をつけて「企業体質」を変えていく必要があると考えている。

 ―19年度上期も2桁成長の増収増益でした。通期の業績見通し、また、重点事業の進捗状況はいかがですか。

 田中社長 19年度業績は増収増益基調で、売上高は2桁成長で推移している。民需系とヘルスケア事業を2本柱として事業展開しており、今期は、特に民需系の伸びが顕著だ。

 ウインドウズ10への更新需要や消費税増税の軽減税率対応なども追い風になったが、当社が強みとする基幹システムの刷新需要も堅調だ。

 ヘルスケア事業は医療、介護、健診の3分野を主体に展開している。医療分野もクラウド化が進むと想定されるため、個人情報などセキュリティ面での強化を図っていく。また、クリニックや病院内での健診システムなど未病分野への事業拡大も進める。

 ―既存事業のクラウド化などの取り組みの一方、新規事業も積極的に強化されています。

 田中社長 デザインシンキングを取り入れ、外部との共創で、新規事業(創造領域)の開拓に積極的に取り組んでいる。新規事業では、食産業全体の持続可能性をサポートするサービスの提供を開始し、第2弾として未病分野への取り組みを始めた。

 共創では、北海道で高いシェアを持つ漁業協同組合と産学官連携を強化中だ。今後、スマート水産など新しいサービスの提供につなげたい。

 ―19年度から取り組まれている新中期経営計画ではどのような企業の姿を目指していますか。

 田中社長 当社は、創業95周年を迎えたのを機に中期経営計画で「目指す姿」を目標に取り組んでおり、売上げ構造を「Bimodal」な事業にシフトし、サービス事業を強化していく考えだ。

 21年度には、売上げの半分をサービス売上げとする計画も実行している。そのためにサブスクリプションモデルでの提供も検討する。

 20年度も、引き続きITは欠かせない要素になる。「やらなければならないIT」だけでなく、お客さまの「やってみたいIT」に一緒に取り組んでいく。