2020.03.30 東京ガス、カーボンニュートラルな都市ガスをPR 環境配慮エネルギーで「価格競争からの脱却の手立て」に
東京ガスとしては、4カ所目の水素ステーションとなる豊洲水素ステーション
オフィスビルや水素ステーションに供給始まる
都市ガス最大手の東京ガスが、使用時までに発生する二酸化炭素(CO₂)を事前に削減する取り組みで相殺させた「カーボンニュートラル都市ガス」を前面に押し出してPRしている。
3月から東京都内のオフィスビルに供給を開始。原料にして燃料製造する水素ステーションも1月から運営を始めた。
環境に配慮したニーズに対応し、「単なるエネルギーの価格競争から脱却する一つの手立て」(東京ガス)と位置づける。
カーボンニュートラルとは、化石燃料を採掘から燃焼させるまでの工程で発生するCO₂量を、他の場所で省エネや森林保全などを通じて削減・吸収させた量で埋め合わせる(カーボン・オフセット)という考え。
環境省によると、海外では信頼性の高い民間の検証機関が、世界各地で取り組む環境保全プロジェクトによる削減・吸収などの効果を、CO₂クレジットとして認証する仕組みがある。
欧州の石油メジャー、シェルグループが、これまでのプロジェクトで得たクレジットで埋め合わせした液化天然ガス(LNG)を、東京ガスが19年6月から購入し、都市ガスの原料としている。そのため、「地球規模では、燃焼させてもCO₂が発生していないとみなされる」(同)という。
東京ガスは、19年10月に熱供給会社と合意書を締結。20年3月からカーボンニュートラル都市ガスを国内で初めて、三菱地所所有の「丸の内ビルディング」(東京都千代田区、供給量年40万立方メートル)と「大手町パークビル」(同、供給量年30万立方メートル)の2棟に供給を始めた。契約期間は25年2月まで。ビルでは冷暖房プラントなどに使用されるという。
また、燃料電池自動車や水素ステーションの普及に取り組む「日本水素ステーションネットワーク合同会社」と共同で、「東京ガス豊洲水素ステーション」(東京都江東区)を20年1月に開設した。
敷地約2000平方メートルには、複数の燃料電池バスに同時供給できる態勢を備えたほか、ステーション内でカーボンニュートラル都市ガスから水素を製造できる。いずれも国内で初めての設備となる。
東京五輪を控える東京都は、20年に燃料電池バス100台以上を導入する目標を掲げており、インフラ面で「燃料供給の拠点になるべく協力する」(東京ガス広報部)考えだ。
また、19年11月に策定した東京ガスの経営ビジョン「Compass2030」では、30年に同社グループの事業活動全体で排出するCO₂をネット・ゼロにする方針が示された。カーボンニュートラル都市ガスが「この目標達成に寄与できる一つ」(同)として普及を広げる狙いだ。
東京ガスは、カーボンニュートラルなLNGや都市ガスなどについて「デジタル技術を活用して最適運用し、新たなサービスメニューとして収益化を図っていく」としている。