2020.06.09 【ITサポートサービス特集】ニューノーマル時代を見据える安心安全配慮の保守サポート

スマートグラスを使った保守なども進む(NECフィールディング コンテストの一幕)

各社のCEは技術力を高めるために日々研さん。技術コンテストで披露するところも多い(写真はOKIクロステック)各社のCEは技術力を高めるために日々研さん。技術コンテストで披露するところも多い(写真はOKIクロステック)

コンタクトセンターは即座にパーティションを置き3密対策を実施。サービスレベルを下げないで運用をした(写真は富士通コミュニケーションサービス)コンタクトセンターは即座にパーティションを置き3密対策を実施。サービスレベルを下げないで運用をした(写真は富士通コミュニケーションサービス)

センター内には透明のアクリル板も設置(富士通コミュニケーションサービス)センター内には透明のアクリル板も設置(富士通コミュニケーションサービス)

 企業の情報システムの保守や運用を行うIT(情報技術)サポートサービス各社は、ニューノーマル(新しい日常)を見据えた、安心安全に配慮した保守サポートを進めていく。

 この数年はIT機器だけでなくIT以外の機器も含めメーカーに依存しないマルチベンダー保守を強化してきた。

 新型コロナ禍ではクラウドやAI(人工知能)、IoTなど最新デジタル技術を使い新たな価値を創造するデジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル変革)もさらに進むとみられ、付加価値の高いサポートサービスにつなげていく計画だ。

 ITサポートサービス各社はこれまで中心に進めてきたサーバーやストレージ、ネットワーク、PCといった情報システムを構成する機器の保守業務が減少傾向にある背景から、メーカーを問わないマルチベンダー保守やIT以外の機器の保守、システムの導入から監視や運用まで総合的なサービス支援に取り組んできている。

 各社の強みでもある全国規模で展開する拠点網、カスタマエンジニア(CE)、データセンター(DC)、監視センターなどを生かしたサービス提案も進む。

 主要サポート各社の動きを見ても従来型のIT保守は減少傾向にあるため拠点網を最大限生かせるサービス展開は大きな課題だからだ。

 実際、メーカーを問わずワンストップで保守する要望や、IT以外の機器も含めて対応を望む声が増えていることもあり、各社は提案に力を入れている。

 DXも今後の大きなテーマだ。センサー類などを活用するIoTの拡大とともに、ITサポート各社の現場での保守も必要になる。

 同時に遠隔監視によるシステムを止めない予防保守なども求められる。従来よりも保守の対象領域が広がれば、それだけCEの技術力も求められる。

 顧客となる企業のDX化だけでなくITサポート各社自体のDXも課題だろう。

 現在、サポート各社はクラウドサービスをはじめDXへの対応にも取り組む。顧客のDXを支援するための遠隔監視などを始めたところも出てきている。

 自身のDX化ではAIやチャットボットの活用をはじめ、スマートグラスの導入なども進む。

 スマートグラスを付けたCEとバックヤードの専門技術者とをつなぎ、幅広い機器の保守を高い品質で実施する事例もある。AIを活用した保守の最適化やチャットボットを活用した顧客対応の強化も進む。

 DX関連技術を活用した保守は、これからのニューノーマル時代には不可欠になってくるとみられている。各社はより高度な保守を進めるために技術力の底上げを目指すとともに、新しい保守時代に向けたサービスメニューの開発にも取り組んでいく。

コロナ禍で目立つ素早い対応

 新型コロナウイルスの感染が国内で一気に広がった3月下旬以降、顧客先への訪問やコンタクトセンター業務などが主軸となるITサポートサービス各社は感染防止策をいち早く講じ安全を最優先にした対応に切り替えた。

 顧客先に直接訪問する保守対応は〝3密〟を生む。電波新聞社が行った主要サポート企業のインタビューでも各社の素早い対応が目立った。

 サポートサービス各社は電話での一次対応をするオペレータや電話対応者から遠隔で支援するバックヤードの技術者といったオフィスでの人財、顧客現場に実際に出向き保守を行うカスタマエンジニア(CE)までが連携している。

 特に故障などの修理に当たるCEは顧客企業の〝ラストワンマイル〟を支えている。

 それだけに感染予防にはどこよりも気を遣う。特に全国拠点網を持つサポート各社は全拠点が最適な感染拡大防止策を取る必要がある。こうした中で各社の対応は非常に優秀だ。手洗いや消毒、マスク着用などは大前提で、分散対応なども工夫している。

 OKIグループで保守サポートを行うOKIクロステックは2月7日に新型コロナウイルス対策本部を設置し社内従事者の在宅勤務の徹底に加え、サービス拠点は分散化やフロア分離などの対応をしている。長年蓄積したノウハウを生かした遠隔保守の仕組みの適用の幅を広げる提案も始めている。

 NECフィールディングは東京、大阪、各支社にある計14カ所のコンタクトセンターの分散化を図った。

 センターへの問い合わせに対するサービスレベルを下げないよう電話の対応については拠点を分散させて対応。

 チャットボットなども活用し処理を最適化した。さらにCEは部品の受け渡しを外で行うなど極力接触を減らしている。

 コンタクトセンター事業を主軸とする富士通コミュニケーションサービスは、オペレータの在宅勤務などができない背景からスタッフ部門の在宅勤務を徹底しながらセンター内での3密を防ぐ施策を打った。

 もともとオペレータの席間に余裕を持たせていたこともあり、人員配置の最適化とアクリルパネル設置などで感染防止している。

 現在はニューノーマルを見据えた在宅勤務型コンタクトンセンターの運用に向け検討を始めているという。

 新型コロナとの付き合いが長期化することから、各社は遠隔でのサポート対応強化や3密を防ぐ施策をさらに徹底することで安全な支援を継続させる構えだ。