2025.01.10 AIによる音声向上技術で高性能の補聴器を実現

AIを搭載しクリアな音声とノイズ除去を実現した補聴器

 テクノロジーの進展により、医療機器の性能も向上している。AI(人工知能)や通信ネットワークの高度化により、遠隔医療や迅速な創薬開発が実現しつつある。AIの演算処理は現在、クラウド上で行われているが、今後はクラウドを介さずデバイス内部で演算処理を行う「エッジAI」が普及拡大していくと見込まれる。そうなれば、補聴器などの身に着ける医療器具も大きな進化を遂げる。

 米Ambiq(アンビック)は9日、店頭で販売される補聴器向けにAIによる音声向上技術を発表した。同社はテキサス州オースティンに本社を構え、バッテリー駆動のエッジデバイス向けにエネルギー効率の高いエッジAIを実現する超低消費電力の半導体ソリューションを提供している。

高価なASICを不要にし、店頭販売型補聴器を入手しやすく

 今回発表したのは、同社の最新MCU(マイクロコントロールユニット)「Apollo510」とAIディープラーニングソリューションを用いた技術。同技術を搭載した店頭販売型の補聴器は、デバイス内音声処理により、これまでにない明瞭な音声とノイズ低減が可能になる。同社の高度なニューラルネットワークリアルタイム処理により、補聴器の性能を大幅に向上させる。

 同社でAIを担当するカルロス・モラレスバイスプレジデントは「高性能な補聴器に必要とされる複雑な音声処理とAI機能の電力要件を大幅に削減することで、当社は高価なASIC(特定用途向け集積回路)の必要性を排除し、コストを削減しながら製品サイクルを加速させる。当社の最先端AI技術を使用し、音質を向上させることで店頭販売型補聴器をより入手しやすく実用的なものにする」と話す。

エッジAIによりノイズ除去と最適なオーディオ処理を実現

 新技術はリアルタイムのニューラルネットワーク音声ノイズ除去技術が、可聴音声を分析して会話を分離し、背景のノイズを除去してユーザー体験を向上。ニューラルネットワーク音響環境検出が、繊細な音響を識別し、ユーザーの環境に基づいたオーディオ処理を動的に調整する。また、AIを活用した高度な適応型音声ソフトウエア処理により、クリアで明瞭な音声体験を提供する。

 店頭販売型補聴器は、FDA(アメリカ食品医薬品局)による2022年の認証以来、市場は急速に成長している。市場が成長する一方、消費者の返品率が高く、高度な音声技術の必要性が高まっていた。アンビックは先端の半導体技術を提供することで、これらの課題を解決することを目指している。今後も高度で超低消費電力のSoCを提供し、エッジデバイスの可能性を広げていく。