2025.01.11 「このためだけに来た」 交換不要なコイン電池、CESでも話題 SMK

開発したコイン電池型自立給電モジュールを持つ森田氏

CESイノベーションアワードを受賞CESイノベーションアワードを受賞

壁付けタイプのエアコン用リモコンにも応用できる壁付けタイプのエアコン用リモコンにも応用できる

 【ラスベガス(米ネバダ州)=CES取材班】コイン電池「CR2032」を代替する、SMKの交換不要な自立給電型コインバッテリーモジュールが「CES 2025」でも話題をさらっている。ブース来場者の多くがこのモジュール目当てで、「このためだけに、このホール(展示場)に来た」という来場者がいるほど。CR2032は用途が広く身近な電池だけに、さまざまな業種業態からアプローチが寄せられている。

 「発表以来、反響がものすごい。CESでは想定していなかった用途で使いたいという話も多くあった」。そう手ごたえを語るのは、SMK米国法人でテクニカル・セールス・マネージャーを務める森田敏弘氏だ。

 SMKがCR2032代替電池を発表したのは昨年9月。周囲の環境から微小なエネルギーを得て電力に変換する技術「エナジーハーベスティング」を活用したもので、小さな太陽光パネルを搭載する。無線通信であるブルートゥースの省電力規格「ブルートゥース・ロー・エナジー(BLE)」をモジュールとして一体化し、CR2032サイズに収めて代替できるようにした。外付けアンテナによる無線給電にも対応し、太陽光発電による充電が利用しにくい場所でも使えるようにしている。

 今回のCESでイノベーションアワードを受賞するなど、技術的に高い評価を得ている。実際、一般から産業まで幅広い用途で「使ってみたい」という要望が多く寄せられているという。

 背景にあるのは、CR2032が交換しづらい場所で使われているケースが少なくないためだ。自立給電による交換不要な点はメリットとして理解されやすい半面、密閉された空間で使われていることも多く、太陽光が当たらない懸念もある。

 森田氏は「ケースを透明にして光が当たるようにしたり、目立たないように裏側に付けているのを表にしたりするなどのひと手間が必要」と説明する。

 無線給電という選択肢はあるものの、外付けアンテナはさほどコストをかけず実現できるとするが、送信機のコストを加味すると現実的とは言い難い面も。そのため、振動や熱など他のエナジーハーベスティング技術を活用した発電も検討している。

 コイン電池であるため、家電量販店など一般店での販売の可能性はあるのか。森田氏は「全くないというわけではないが、現状では決まっていない」とする。ただ、「購入したい」という一般客からの問い合わせが既にあるため、何らかの対策は検討していきたい考えを示す。

 自立給電を可能にする条件も必要になることから、工場やビルディングマネジメントなどの組み込み用途で当初は販売が立ち上がることを見込む。技術力の訴求やインパクトを考慮し、CR2032代替のコイン電池サイズで開発したが、実際はその大きさに限定されるわけではないという。そのため、より大きな電池サイズや発電面積を確保することで、例えば、室内光で発電する壁付けのエアコン用リモコンなどにも応用できる。

 モジュールは3月からサンプル出荷を開始する予定で、価格は1個当たり約1万円。1年以内の量産を目指している。量産時にどこまで価格を抑えられるかに期待したいところだ。