2025.01.16 エヌビディア、ロボット工学とデジタル製造におけるAI導入を推進
GB10を手にするフアン氏
CES 2025におけるエヌビディアの発表は自動運転車だけでなく、ロボット工学やデジタル製造業を変革するために、強力なGPUとAI(人工知能)プラットフォームを拡張する同社の気概を浮き彫りにした。
CES 2025前の基調講演で、エヌビディア創業者兼CEOのジェンスン・フアン氏は、ロボット工学や製造業などの自律システム向けに強力なAI機能を提供することを目的としたCosmosプラットフォームを発表した。「NVIDIA Cosmos」は、最先端の生成世界基盤モデル、高度なトークナイザー、ガードレール、高速化されたビデオ処理パイプラインで構成されるプラットフォーム。物理的AIシステムの開発を促進する。
実世界の状況をシミュレート
物理AIモデルの開発にはコストがかかり、膨大な実世界データとテストが必要となる。Cosmosワールドファウンデーションモデル(WFM)は、膨大な量のフォトリアルな物理ベースの合成データを簡単に生成し、既存モデルのトレーニングや評価に利用することができる。また、Cosmos WFMを微調整することで、カスタムモデルを簡単に構築することもできる。
Cosmosは、WFMを使用して実環境をシミュレートするため、開発者は仮想環境でAIシステムをテストし、改良することが可能。このアプローチは、コストを削減するだけでなく、安全かつ制御されたテスト環境を提供することで、開発プロセスを加速させる。 フアン氏は「今日、われわれはCosmosがオープンライセンスであることを発表する。Cosmosがオープンであることで、メタ社のAIモデル『Llama 3』が産業用AIに対して行ってきたことを、ロボット工学と産業用AIの世界に対して行うことができると期待する」と話した。
製造業における進歩
エヌビディアのAIツールは、製造の自動化においても進化を後押しする。具体的には、ヒューマノイドロボットを訓練するための合成モーションデータを生成する「Isaac GR00Tブループリント」を発表した。同時に、現実の施設に配備する前に、デジタルツインで物理的なAIとロボット群を大規模に開発、テスト、最適化するためのオムニバース・ブループリントである「Mega」も発表した。
Megaは、同社のアクセラレーテッド・コンピューティング、AI、Isaac、Omniverseテクノロジーのリファレンス・アーキテクチャーを企業に提供。Megaユーザーは、ロボットを駆動するAI搭載ロボットブレーン、ビデオ解析AIエージェント、機器などをテストし、膨大な複雑性とスケールに対応するためのデジタルツインを開発・テストすることができる。この新しいフレームワークは、ソフトウエア定義の機能を物理的施設にもたらし、継続的な開発、テスト、最適化、展開を可能にします。
AIをより身近なものに
フアン氏は、AIをより身近なものにすることを目指し、ほかにもいくつかの発表を行った。そのうちの一つが、NVIDIA Project DIGITS。Project DIGITSは、新しいNVIDIA GB10 Grace Blackwell Superchipを搭載し、大規模なAIモデルのプロトタイピング、ファインチューニング、実行のためにペタフロップのAIコンピューティング性能を提供するパーソナルAIスーパーコンピューター。「AIは、あらゆる業界のあらゆるアプリケーションで主流になるだろう。Project DIGITSによって、Grace Blackwell Superchipは何百万人もの開発者に提供されることになる」とフアン氏は語る。さらに、「AIスーパーコンピューターを全てのデータサイエンティスト、AI研究者、学生の机の上に置くことで、彼らがAIに関与し、AI時代を形作ることができるようになる」とも述べた。
Project DIGITSでは、ユーザーが自分のデスクトップシステムを使ってモデルを開発し、推論を実行することができる。そのため、開発者は加速されたクラウドやデータセンターのインフラ上にモデルをシームレスに展開することができる。
Project DIGITSの心臓部は、NVIDIA Grace Blackwellアーキテクチャーに基づくGB10 Superchip SoC。FP4精度で最大1ペタフロップのAI性能を実現できる。GB10の設計にはArmベースのSoC設計で市場をリードする台湾のMediaTekが協力。GB10のクラス最高の電力効率、性能、接続性に貢献している。
GB10は、最新世代のCUDAコアと第5世代のTensorコアを備えたNVIDIA Blackwell GPUを搭載し、NVLink-C2Cチップ間相互接続を介して、Armアーキテクチャーで構築された20個の電力効率に優れたコアを含む高性能NVIDIA Grace CPUに接続されている。
今回のCES 2025で紹介されたエヌビディアの最新技術は、これまでデジタル空間におけるAI利用の枠を飛び越え、ロボットや産業機器へのAI導入を加速させるだろう。従来の単純作業だけでなく、多少複雑な作業でもロボットがこなし、自律的に動くことで効率化も実現できる。製造現場で課題となる人手不足解消にも貢献していく。