2025.01.24 「メイド・バイ・マレーシア」への転換 半導体産業の未来を拓くデザインパーク
マレーシア半導体ICデザインパークは、チップ設計能力を向上させ、テストとパッケージング技術のレベルアップを目指す。(写真出典:Selangor Information Technology and Digital Economy Corporation)
マレーシア政府は半導体産業支援に力を入れている。その一環として東南アジア最大の半導体設計の集積地を目指しており、昨年「マレーシア半導体ICデザインパーク」の設立を発表した。同デザインパークの設立は、マレーシアの半導体の実力を高め、海外からの投資を呼び込むことを目的としている。この取り組みを通じて、マレーシアは「メイド・イン・マレーシア」から「メイド・バイ・マレーシア」へと歩みを進めることになる。
同デザインパークは、セランゴール州プチョン市にある「プチョン・フィナンシャル・コーポレート・センター」に開設予定。マレーシアが半導体産業のグローバル・リーダーになるための重要なマイルストーンとなる。これまでマレーシアには後工程の工場が多く進出していた。今後はチップの設計能力を向上させることで、テストやパッケージングなどの技術力や品質向上につなげていく。
このプチョン・フィナンシャル・コーポレート・センターは、2024年4月に発表されたKL20構想の成功例の一つでもある。セランゴール州情報技術・デジタル経済公社(Sidec)によると、同センターはマレーシアの技術力と資源を活用することを目的とするとともに、技術革新を促進し、ハイテク製造と設計におけるマレーシアの価値を高める狙いだ。
世界のチップシーンにおけるマレーシアの役割を拡大
Sidecのヨン・カイ・ピン最高経営責任者(CEO)は「マレーシア半導体ICデザインパークは、セランゴール州の経済成長に大きく貢献する。東南アジア地域初となるIC設計拠点でもあり、5億〜10億リンギットの経済的利益をもたらす。同デザインパークは、マレーシアをパッケージングやテストといった後工程からIC設計の前工程に近づけるだろう」と話す。
同デザインパークは、当初4万5000平方フィートのビルに建設されるが、業界のニーズに対応するため、将来的には6万平方フィートまで拡張される予定。「3階建てから6階建てに拡張する予定で、既に国際的な投資家から強い要望を受けている」(ヨン氏)。
同デザインパークは、技術革新と成長を促進する最先端の施設と包括的な支援システムを提供することで、マレーシアの半導体部門を変革することを目指す。このイニシアチブは、グローバルな舞台におけるマレーシアの地位を高め、メイド・バイ・マレーシアの半導体製品をサプライチェーンに組み込んでいく。
成長するパートナー
同デザインパークには、4社のパートナー企業が参画することが決まっている。具体的には、Arm、Phison Malaysia、SkyeChip Sdn Bhd、Shenzhen Semiconductor Industry Association。Armは、プロセッサー用の知的財産(IP)コアと関連技術の提供を専門とする、世界の半導体エコシステムにおいて重要な企一業の一つ。アップル、マイクロソフト、サムスンなど1000社以上のグローバル・パートナーにライセンス供与している。
これらのパートナー企業に加え、同デザインパークには国内外および合弁のIC設計会社5社から400人以上のIC設計エンジニアが入居する予定。その中にはMaistorage、Skyechip、Weeroc、AppAsia、 ChipsBank、SensoremTek Sdn Bhdが含まれ、BlueChip VC、Arm、Cadence Design Systems、Synopsys、Siemens EDA、Keysight、Shenzhen Semiconductor Industry Associationなどのエコシステム・パートナーがサポートしている。
大規模な人材募集
また、マレーシア政府の協力により開発されたこの最新鋭施設は、特にエンジニアリング分野において、月給5000~7000リンギットの高給を提示するなど、ハイレベル人材に対する手厚い待遇も用意する。同デザインパークでは、電気・電子工学、機械工学、メカトロニクス、コンピューター・サイエンスの学位を持つ熟練者を積極的に募集し、ハイテク人材の集積も高めていく。
さらにSidecは、マレーシアおよび国際的なIC企業のために、4~8年の経験を持つ経験豊富なエンジニアの採用を支援している。これらのエンジニアは、セランゴールICデザインパーク内でこれらの企業の拡大をリードする極めて重要な役割を果たす。