2025.02.07 【開発のキセキ㊤】貝印 自動生クリームホイッパー 「生クリッチ」 生クリーム愛を形に

生クリッチ発案者の小林さん(左)と開発をメイン担当した臼田さん

本体や泡立てるウィスク、カップ、中間パーツは全て取り外せる。(提供写真)本体や泡立てるウィスク、カップ、中間パーツは全て取り外せる。(提供写真)

 「生クリームが好きで、でも作るのには不便だと思うことがあった。その不便さを解消できればと思った」。貝印は2023年12月、応援購入サイト「マクアケ」で自動生クリームホイッパー「生クリッチ」のプロジェクトを開始。24年3月に一般発売した。総合刃物メーカーとして、畑違いの家電を手掛ける挑戦的な製品となった。

 生クリッチは、専用カップに生クリームを入れてボタン一つで気軽に生クリームをホイップできる製品。生クリームのホイップに必要となる事前に容器を冷やす手間や、周囲に飛び散りがちといったホイップ時の課題を解決し、日常的に生クリームを楽しめるようにした。

 本体や泡立てるウィスク、カップ、中間パーツは全て取り外せる。本体以外の部品は食器洗い乾燥機にも対応する。

 生クリッチは、21年7月に初開催された社内のアイデアコンペに応募されたアイデアを製品化したもの。応募したのは、貝印/カイ インダストリーズの研究開発本部研究部兼研究開発本部第二開発部次長の小林甫さんだ。

 アイデアコンペに勝ち残った生クリッチの製品化には、企画やデザイン、マーケティング担当など6人が関わった。小林さんはプロジェクト全体を管理し、カイ インダストリーズ研究開発本部研究部マネージャーの臼田雅史さんが開発のメイン担当者として携わった。

 小林さんは、電子部品、医療機器のメーカーを経て18年7月に入社。カミソリ刃のコーティング開発や、カミソリ、包丁、爪切りの切れ味評価の方法を開発するなどしてきた。

 臼田さんは、家電メーカーを経て、小林さんと同じ年の2月に入社。開発部に所属し、カミソリの設計開発を担当。23年4月に研究部に異動し、現在は新製品の設計開発をはじめ、カミソリや爪切りなどの評価方法の検討開発を担当している。

 生クリッチの製品化に向け6人は、それぞれが培ってきた経験と、“生クリーム愛”を原動力に試行錯誤した。

 生クリームは、生乳だけが原材料の動物性と、パーム油やヤシ油などを原材料とした植物性のクリームに分けられる。材料の異なる生クリームの最適な仕上がりをボタン一つで叶えたのは、モーター電流値の高低と、生クリームの泡立ちを応用したアルゴリズムを活用したセンシング技術だ。

(つづく)