2025.02.08 【開発のキセキ㊥】貝印 自動生クリームホイッパー 「生クリッチ」 モーターの電流値で生クリームの混ぜ具合を把握
押すだけで、生クリームに合わせて最適に泡立てる。(提供写真)
生クリームは、素材によって最適な混ぜ時間が異なる。貝印の自動生クリームホイッパー「生クリッチ」は、ボタンを押すだけでクリームの状態を感知し、7~8分立てになると泡立てを自動停止する。その要となっているのが、生クリームの固さとモーターの電流値の変化を生かしたアルゴリズムによるセンシングだ。
カップ内の生クリームが泡立ってくると、ウィスクの回転数が落ちてくる。「生クリームの固さとモーター電流値の負荷が関係する」と考えたのは、生クリッチの発案者、貝印/カイ インダストリーズの研究開発本部研究部兼研究開発本部第二開発部次長の小林甫さん。
同じ生クリーム好きで、生クリッチの開発のメイン担当のカイ インダストリーズの研究開発本部研究部マネージャーの臼田雅史さんと相談しながら、実証を始めた。
生クリームは植物性や動物性、安定化剤の有無などで泡立ち具合が変化する。温度にも左右される。「どういうアルゴリズムにすれば上手くいくのか。変化する要素がたくさんあり、大変だった」(小林さん)。
ウィスクの形状を少し変えるだけでも、泡立ちへの影響が大きくなる。一つに対処すると、それ以外の部分のバランスが崩れてしまうため、全体を見ながら改良を続けた。
当初は、動物性や植物性の生クリームの種類や6分立てや7分立てといった泡立て具合によってモードを設定してボタンを作る案も出たが、最終的には本体のボタンは一つにすることに。
「種類ごとにモードを設定するほうが、メーカー側としては楽に製品化できる」(臼田さん)が、ユーザーの使いやすさを優先し、一つのボタンを押すだけで生クリームの状態を検知して最適な仕上がりになるようにした。
リチウムイオン電池を使った充電式を取り入れることも、貝印としての初めての挑戦だった。コンセントにとらわれず、どこでも作りたての生クリームを楽しめる。生クリームづくりのハードルを少しでも下げたかった小林さんは、充電式仕様にすることは始めから決めていた。
どのようにリチウムイオン電池を組み込んで製品化するか。臼田さんは「出力モーターのトルクに余裕を持たせ、バッテリー選びでも幅広い製品に使われているものを選んだ」と、挑戦が経験になった。
(つづく)