2025.07.22 「飛行機に乗るように宇宙へ」 ロケット開発スタートアップCEOが30年代実現に意欲

宇宙飛行の実現を目指すスペースウォーカーの眞鍋顕秀CEO

 誰もが飛行機に乗るように自由に地球と宇宙を行き来する――。そんな未来を見据えて翼をもつ再使用型ロケット「スペースプレーン」の研究開発に取り組む東京理科大学発のスタートアップが、存在感を放っている。SPACE WALKER(スペースウォーカー、東京都港区)だ。2030年代の宇宙旅行の実現を目指す同社代表取締役CEOの眞鍋顕秀氏に、描く宇宙輸送ビジネスの戦略や展望について聞いた。

 ―スペースプレーンの社会実装に向けた開発・生産体制づくりを着々と進めています。

 眞鍋CEO スペースプレーンの開発や将来的な量産化に向けた生産体制を構築しようと、5月に福島県南相馬市に拠点を設置した。この拠点はエンジンを生産する工場として機能し、構成品の製作や組み立てから燃焼などの各種試験まで行う。

 ―南相馬市は先端技術の開発を支援するインフラが整っています。この地の魅力は。

 眞鍋CEO 南相馬市はロボットやドローン(小型無人機)などの先端技術の開発に力を入れている。宇宙産業に対しても、協力的な雰囲気がある。市との連携を密にし、新たな産業基盤の形成に貢献していきたい。

 ―実現したい宇宙輸送ビジネスは。

 眞鍋CEO コンポーネントごとに違う会社が担当するという特徴を持つ国内自動車産業の構造を参考にしている。価格が高くてもユーザーに求められるというブランディングを行うことが大事だ。

 ―2030年代に宇宙旅行を実現する目標を掲げた理由は。

 眞鍋CEO 有人宇宙輸送や往還機を飛ばすための法整備が整う必要がある。さらに宇宙輸送技術や生産体制づくりも進展する必要もあり、これらを踏まえて30年ごろを目標に宇宙旅行を目指すことにした。

水素社会視野に複合材タンクも

 ―水素社会を支える複合材タンクの開発も進めています。

 眞鍋CEO ロケット燃料として、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量が実質ゼロ)を実現できる「液化バイオメタン」を採用している。それを充填するタンクは重要なコンポーネントで、機体全体の質量の軽量化に大きく影響する。燃料を安全で効率的に輸送・貯蔵できる複合材タンクの開発にも取り組んでいる。ロケット開発から生まれたタンクは、水素をはじめとしたクリーン燃料の輸送や貯蔵に生かすことができる。

 ―宇宙産業を担う人材の育成も重要な課題となっています。

 眞鍋CEO 宇宙産業の可能性を開拓する時代がこれから到来する。大学と共同研究できる大学発スタートアップの強みを生かし、研究室から次世代を担う人材を育成していきたい。