2025.09.26 【関西エレクトロニクス産業特集】Beyond EXPO 宇宙開発 サーブのワントCIO、ISS滞在経験を生かす AI技術導入で革新
ワント宇宙飛行士(左)とAIの責任者ラジ氏
大阪・関西万博では宇宙・防衛分野への関心の高さが感じられた。8月以降の会期後半になってもさまざまな催しが行われた。
9月16日に北欧5カ国の共同館「ノルディック・サークル」で、スウェーデンの宇宙・防衛企業SaaB(サーブ)による講演会「イノベーションデー」が開催された。
サーブはかつて自動車メーカーとしても欧州市場で活躍したが、現在は宇宙、防衛分野が専門。今回のイベントには日本の取引先やパートナー、学界などから約30人が出席。
最初にチーフ・イノベーション・オフィサー(CIO)として登壇したマーカス・ワント氏は宇宙飛行士の経験を生かし、サーブの先進的な航空機の開発・試験に貢献していくと述べ、ISS(国際宇宙ステーション)に滞在した経験をサーブの技術革新に生かしていると自己紹介。
ワント氏はサーブの次世代計画「プロジェクト・ビヨンド」の一環としてAI(人工知能)エージェント「Centaur]搭載のジェット戦闘機「Gripen E」の開発現状についても紹介、AIによる自律飛行が進み無人機へ向かいつつあるという。
デバキ・ラジ氏は最高デジタル・AI責任者としてサーブでAI技術の戦略的導入とデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を担当。同社の製品全体にAIを組み込み、国防面や安全保障分野での能力向上を推進している。
ラジ氏は「中小企業はパートナーシップを求めている。当社はIP(知的財産)を広く共同開発するために大学と協業していきたい」と国内産業の育成や若い層の底上げが重要と強調。2人は講演後の対談でもサーブが進むべき革新性や社会的インパクトについて話し合った。
大学の宇宙開発研究の成果を披露したのが立命館大学。8月8日、9日に会場内のEXPOメッセ「WASSE」で宇宙を体験するイベントを実施、夏休みとあって中・高校生も多くにぎわった。同大学は2023年7月に宇宙地球探査研究センター(ESEC)を設立するなど、宇宙開発研究を推進してきた。
会場では24年1月にピンポイント着陸に成功した小型月着陸実証機(SLIM)に搭載のマルチバンド分光カメラ(MBC)や宇宙航空研究開発機構(JAXA)の協力により開発中の有人与圧ローバー(月面探査車)の10分の1モデルを展示。展示会場を指揮したESECの佐伯和人センター長は「月へ降りてから作業する探査の人材を育てたい」と語っていた。