2025.10.06 アイルランド、欧州での半導体拠点の地位強化へ

IDAアイルランド 半導体グループ テクノロジー部門のキャロルバイスプレジデント

ティンダル国立研究所のオマフナ教授ティンダル国立研究所のオマフナ教授

 アイルランド政府産業開発庁(IDAアイルランド)は半導体産業を核としたビジネス基盤整備に注力し、半導体の産業振興に取り組んでいる。グローバルの半導体大手企業が数多く進出し、半導体の産業集積が盛んなアイルランド。欧州における最先端半導体の生産・開発拠点としての役割を担い、強固な半導体エコシステムの構築を目指す。

 アイルランドは、欧州の西海岸に位置する島国。人口538万人のうち約50%が35歳未満と若く、25年のGDP(国内総生産)成長率は2.3%を見込む。EU(欧州連合)全体のGDP成長率予測は落ち込む中、高い経済成長率を維持している。

 同国は、古くから半導体の産業集積が盛ん。インテルやアナログ・デバイセズなどが生産拠点を有しており、クアルコム、インフィニオン、AMD、アームなどの半導体大手企業がチップの設計開発を行っている。アプライドマテリアルズやASMLなどの半導体製造装置企業の拠点もあり、東京エレクトロンなど日系企業も進出している。

 IDAアイルランドは、今年から国家半導体戦略「シリコン・アイランド」に基づき半導体産業のビジネス基盤強化を加速。欧州半導体法の施行により進められている域内投資プロジェクトにも参画しており、国内での投資拡大を通じて欧州全体における半導体サプライチェーンの強靭化に貢献する。

 IDAアイルランド 半導体グループ テクノロジー部門のシェイマス・キャロル バイスプレジデントは「アイルランドには2万人以上が半導体産業に従事しており、欧州でも先進的なファブ拠点や設計開発拠点を有している。近年、教育や研修にも力を入れており、世界の半導体産業をリードする有力企業が人員増強などの投資を行っている。日本からの投資拡大にも期待している」と話す。

技術革新を支える国立研究所

 アイルランド国内には半導体関連企業のみならず、最先端半導体を支える研究機関も多い。中でもアイルランド南部の都市、コークに本拠を構えるTyndall(ティンダル)国立研究所は半導体やナノテク、量子、人工知能(AI)、無線通信・エネルギーなどの技術革新を支えている。研究所内には半導体製造インフラも備えており、パートナー企業とのプロセス開発などにも取り組む。半導体領域における研究分野は、1nm台のSoC実現に向けた最先端デバイスの開発や先進パッケージング技術、集積化、シリコンフォトニクスなど多岐にわたる。

 ティンダル国立研究所の総合電力・エネルギーシステム研究部門でディレクターを務めるキアン・オマフナ教授は「ティンダル国立研究所ではディープテック分野の国際的なリーダーを多数輩出しており、最先端技術の開発をけん引している。欧米を中心とする半導体のリーディング企業がパートナー企業として参画しており、日本からはアルプスアルパインや太陽誘電などの電子部品メーカーと共同研究に取り組んでいる。1万7000㎡の新研究施設も建設しており、今まで以上の最先端技術開発に取り組むことができる。新施設は現在の研究所敷地面積の2倍となる」と話す。

 アイルランドは長年形成してきた半導体産業のビジネス基盤を礎とし、ティンダル国立研究所をはじめとする研究機関が最先端領域の技術開発を支えている。IDAアイルランドは事業環境の整備を加速させ、グローバルでの半導体エコシステム構築に取り組む。