2026.01.26 【半導体総合・エレクトロニクス商社】半導体需要、AIはエッジとフィジカルへ拡大
「GENE.01」の前に立つAMDのスーCEO(左)とジェネレーティブ・バイオニクスのプッチCEO(出所:CES 2026)
汎用メモリー供給課題に
世界の半導体市場は人工知能(AI)がけん引し、演算を担うロジックやデータ記憶をつかさどるメモリー分野で伸びが続く。従来データセンター(DC)で稼働するクラウドAIが主力だったが、2026年に末端の機器で動作するエッジAIを強化した北米製スマートフォンが微細な2nm製造プロセスを採用したロジック半導体の一種システム・オン・チップ(SoC)を搭載するとの観測が強まり、供給元の台湾半導体受託製造(ファウンドリー)大手の25年中の生産本格化と重なって話題を呼んでいる。
AIが情報処理だけでなく物理的機器などを制御するフィジカルAIも、26年1月に開催した北米の先端技術展示会「CES 2026」ではスタートアップだけでなく半導体や自動車大手も人型ロボットをはじめロボティクス分野への傾注を見せつけた。工場を持たずロジック半導体のCPUやGPUなどを手がける米ファブレス大手Advanced Micro Devices(AMD)のリサ・スーCEOが講演でイタリアGenerative Bionics(ジェネレーティブ・バイオニクス)のダニエレ・プッチCEO、AI搭載の人型ロボット「GENE.01」とともに壇上に立ったのは象徴的だ。
DCも足元は設備投資が旺盛。新用途拡大と合わせ、北米大手DC事業者の過剰投資の反動による需要減「AIバブル」の崩壊を避け、一層の需要増「スーパーサイクル」へ移行するシナリオが想定される。外部環境のセンシングや可動部の精密制御が不可欠なフィジカルAIはロジック、メモリー以外の半導体への恩恵も期待できる。
米調査大手ガートナーの1月推計によると、世界の半導体売上高は25年に前年比21%増の7930億ドルに達し、そのうちAI向けのプロセッサー、1次記憶を担うDRAMの一種である高帯域幅メモリー(HBM)、ネットワークコンポーネントなどが3分の1を占めると分析。AIインフラ支出が26年に1兆3000億ドルを超えるとの予測も挙げ、この比率がより高まると見通す。同社の作る売上高番付では、半導体メーカー大手10社のうち5社が24年から順位を移した。DCに欠かせないロジック半導体GPUの雄で番付1位の米エヌビディアは不動だが、25年、メモリーの好調で2位を堅持した韓国サムスン電子と差を広げた。HBMに強い韓国SKハイニックスは4位から3位に進み、統合デバイスメーカー(IDM)の米インテルは3位から4位に退いた。HBMを含むメモリーで存在感を発揮する米Micron Technology(マイクロン)が7位から5位に上昇している。

ロジックでエヌビディアが独走する一方、メモリーは複数社が支える構図だがDCでの需要増に加え、供給側がDRAMでHBMのような先端品へ集中し、旧規格DDR4などの汎用品生産を縮小する流れから価格高騰も激しい。香港や韓国に拠点を置く調査会社Counterpoint Researchの調査によると、メモリー価格は25年第4四半期に前四半期比40~50%の伸び、26年第1四半期にはさらに40~50%、第2四半期は20%上昇する見込み。
流通を担うエレクトロニクス商社にとって増収をもたらす一方、課題となるのは在庫確保だ。リョーサン菱洋ホールディングスの中村守孝社長は「需給バランスが崩れることは常にある」としつつメモリーなどの供給不足に注目。RYODENの富澤克行社長は「在庫確保に早めに動いている」とし足元で旧規格品の生産が再拡大する可能性は薄いとみる。
25年特に不足が激しくなったDDR4製品は後発の中国長鑫存儲技術(CXMT)でも生産終息に向かう見通しで、供給の大きな伸びは想定しにくい。既にパソコン価格の上昇などの形で表れた影響は、情報機器を中心にさらに広がる可能性がある。
電力の変換制御を担うパワー、連続的なアナログ信号の処理を担うアナログ半導体産業にとって重要な車載や産業機器(産機)分野を見ると、丸文の堀越裕史社長は一部で「25年夏から停滞局面を脱した」と述べる。それでも海外製中心に多数の半導体を扱う別の大手商社は「全体として日本の半導体景気が戻っているとはいえない」との認識を示し、これは業界に通底する。同幹部は26年の期待として「一日も早く車載、産機を含めて需要が戻ってくること」を挙げた。産機でも最先端の半導体製造装置向けは活発との声は複数商社から聞こえ、26年夏以降に登場する新装置が注目だ。
パワー半導体は22年のコロナ禍での物流寸断懸念による在庫確保後の調整の影響が長引いたほか、英諾賽科(イノサイエンス)など中国勢の存在感も高まり、25年も新たに取り扱いを打ち出した商社があった。25年にオランダNexperia(ネクスペリア)製品が中国工場からの出荷停止で供給問題に陥ったこともあり、中国製に慎重な姿勢を示す企業はあるものの、価格競争力などから長期的に無視はできないとする商社の指摘もある。日本勢は三菱電機などが意欲を示す業界再編などが引き続き関心を集める。
アナログ半導体メーカーのエイブリックは車載の本格回復は28~30年度と予測。車両を動かす主機と別に搭載電子部品を動かす補機バッテリーが従来の12Vから48Vへ変わり、電源ケーブルの細線化などを図る技術革新が追い風とみる。
新興市場開拓ではインドへの傾注はより顕著になっている。日本の最終製品メーカーの進出が拡大する中、インド政府が部品を含め現地生産を重視する方針から部品メーカーも現地生産を強化し商社も対応する。25年に立花エレテック、カナデンが現地法人を設立したが、26年も別の商社が同国で事業を本格化させる動きがある。








