2020.10.23 「5G産業利用への取り組みと今後の展望」 CEATECパネルディスカッション

左から中尾氏、奥村氏、手塚氏、藤本氏、大屋氏

通信業界以外で関心高まる

 「CEATEC 2020 ONLINE」2日目(21日)のコンファレンスは「5GスペシャルデーⅡ」として、今春商用化が始まった5Gに関するワークショップが終日開催された。このうち「5G産業利用への取り組みと今後の展望」をテーマに掲げたイベントでは、中尾彰宏5GMFネットワーク委員会委員長を司会に、5Gの普及に向け活動を続けている4人のスペシャリストがパネルディスカッションを開催。5Gの現状と課題、今後の取り組みについて語った。

 5Gの現状について、5GMFで5G実証試験推進グループリーダーを務めるNTTドコモの奥村幸彦氏は「幅広い業界・業種、特に通信業界以外で5Gへの関心が高まっている。実証試験では地方創生につながる地域特有の実証を行ってユースケースを創出し、積極的にグローバルに紹介してきた。今後は商用装置と端末を使ってこれを具現化していくことが重要だ」と指摘した。

高度化が不可欠

 また奥村氏は課題として、前世代から飛躍的に向上した5Gの通信能力を十分に活用するために基地局と端末の機能強化に加え、5Gと組み合わせる周辺機器や技術の高度化が不可欠と提言。

 セルラーでは5Gで初めて採用した28ギガヘルツ帯の高周波数帯についても「使用に関して未知の部分がある」とし、より実践的な環境でミリ波の安定的な通信を実現し、その能力を最大限引き出すための研究を続けていかなくてはならないと語った。

 5Gの普及に向けてNECの藤本幸一郎氏は「通信以外の業界も巻き込んで、5Gを広く使える技術として使えるようにするための裾野作りが求められている」と発言。

 東芝の大屋靖男氏も「普及を妨げる特定の要因はないが、一気に加速させるような特効薬もない現状で、エコシステムに関わる多くのステークホルダーが協業し、新しい化学反応を起こすといった行動が必要」と述べた。

機能拡充が重要

 また5Gはセキュリティを向上させる様々な機能を備えるとされるが、5GMFセキュリティ調査研究委員会委員長の手塚悟氏は、「まだまだ強化が必要」と話す。「従来、アプリケーションなど上位レイヤーでセキュリティを確保しなければならなかったものを5Gのところでその機能を代用できれば、アプリ開発者は非常に楽になる。基盤の方でしっかりセキュリティを確保し、社会インフラとして支えるという形に5Gがなっていくためにも機能拡充が重要」と強調した。

 ▽司会=中尾彰宏氏(第5世代モバイル推進フォーラム=5GMF=ネットワーク委員会委員長)

 ▽パネリスト=奥村幸彦氏(5GMF5G実証試験推進グループリーダー/NTTドコモ)

 手塚悟氏(5GMFセキュリティ調査研究委員会委員長/慶応義塾大学教授)

 藤本幸一郎氏(情報通信ネットワーク産業協会=CIAJ/NECネットワークサービスビジネスユニット・デジタルネットワーク事業部上席事業主幹)

 大屋靖男氏(CIAJ5G/Beyond5Gシステム委員会委員長/東芝)