2020.11.05 【冷蔵庫特集】在宅時間増で大容量化進むIoT化など冷凍・冷蔵技術進化

在宅時間が増えて内食が進む中、冷蔵庫への関心が高まる

 冷蔵庫は、新型コロナ感染症拡大による巣ごもり需要の拡大で、調理家電が好調に推移したこともあって、安定した需要がある。もともと共働き世帯の増加を背景に、まとめ買い需要が拡大したことに対応し、冷凍食品や総菜、作り置きをしっかり収納できる大容量の冷蔵庫が好評だった。在宅時間が増えて家庭で食事する機会が増えたことで、さらに冷蔵庫も活躍する機会が増えている。

 冷蔵庫は、大容量化が進むとともに、鮮度保持性能の進化や省エネ性能の追求、さらにはIoT化による使い勝手の向上など、より商品の利便性が高まっており、買い替え需要を中心に安定した需要がある。

 近年は新型コロナウイルス感染症の拡大で在宅機会が増えたことから、従来以上にまとめ買い・冷凍保存のニーズが高まっており、冷蔵庫の大容量化へのニーズは高まっている。

 一方、在宅時間の増加に伴う家事の効率化や時短調理へのニーズの拡大で、冷凍保存した食材を活用した調理への関心も高まってる。よりおいしさをキープした冷凍を実現するなど、調理をアシストする機能も進化している。

 冷蔵庫の需要はこのところ年間400万台弱の安定した需要がある。新型コロナウイルス感染症の拡大が影響し、今期4月以降は苦戦傾向が見られたものの、自粛緩和による店頭への客足の回帰で徐々に販売も回復。

 9月は、前年の駆け込み需要があったことから、その反動で前年を割り込んでいるが、4-9月通期ではほぼ前年並みの推移をしており、今後年末商戦に向けては、また徐々に商戦は復調していくとみられる。

 年末商戦に向けては、進化した最新冷蔵庫のメリットをしっかり訴求することも含めて、幅広い観点で活性化対策が問われることになりそうだ。鮮度保持やIoT化といった、全体的に冷蔵庫の商品進化を背景に買い替え需要を掘り起こしていくことが重要だ。

市場動向

 冷蔵庫は普及率も高く、基本的に買い替え需要が中心の安定した動きとなる。

 19年度下期は消費税増税の反動減があったことから、前年増ペースでの推移が見込めることも考慮すると、上期もほぼ前年並みで推移したことで、年末商戦も安定した需要が見込める。

 こうした中、冷蔵庫の買い替え需要をさらに顕在化させる商品的な切り口は、多彩な食材を収納できる大容量や、設置場所に配慮したコンパクト性、鮮度を長持ちさせる冷蔵・冷凍保存性能の進化、IoT化による利便性の向上など幅広い。

 冷蔵庫の大容量化については、401リットル以上の大型冷蔵庫の構成比は着実に高まっており、501リットル以上へのシフトも進んでいる。

 20年度上期は、401リットル以上の冷蔵庫の出荷比率(台数ベース)は47.3%を占めている(日本電機工業会ベース)。

 大容量化の背景には、共働き世帯の増加により、冷凍食品や作り置きなどを収納する食材が増えたことが影響している。

 共働き世帯は年々増加している。専業主婦世帯の倍となる1200万世帯強(18年/総務省)に上る。

 共働き世帯では家事の効率化が大きな関心事。忙しい合間に料理を作ったりするために、手軽な調理や時短調理が好まれる。

 また使いたいとき、すぐに使える食材として、冷凍食品はもとより、肉・魚・野菜など生鮮食品の冷凍保存へのニーズも強まる。

 こうした流れは新型コロナ感染症拡大に伴う、新しい生活様式へと変化する中で、より加速した。とりわけ在宅時間の増加は、家事の負担増大につながることから、調理の面では時短調理など効率化へのニーズ、さらにはおいしさ、健康的といった視点でのニーズが強まっている。

 家で調理する機会が増えたことから、冷蔵庫には収納性が求められ、より冷凍・冷蔵技術が進化した付加価値の高い大容量冷蔵庫の提案をしやすい環境になっている。

 特に外出自粛の中においては、冷蔵庫の使用頻度は高まったことによって、より冷蔵庫への関心は高まったといえる。

 パナソニックの調べでも、在宅時間が増えて調理家電の利用頻度がどれだけ増えたか調べたところ、オーブンレンジ、冷蔵庫、炊飯器が特に増えたと回答するユーザーが多かった。

商品動向

 冷蔵庫各社では、冷蔵庫の使用実態の変化に合わせて、新製品投入や機能進化を図るなど、様々な視点で最新商品の訴求に力を入れている。

 近年、各社の冷蔵庫開発の方向性は冷凍・冷蔵技術のさらなる進化、鮮度保持性能の向上といった冷蔵庫本来の本質的な機能追求がある。

 また家庭での消費電力量に占める割合が比較的高いことから、省エネ性能の追求も大きなテーマとなっている。各社が高効率な真空断熱材を採用し、コンパクト性および省エネ性を追求する。

 キッチンのインテリアにも配慮し、ガラスドア採用などデザイン性を高めている。

 さらに最近では、IoT対応の加速も大きな変化といえる。

 IoT対応の面では、スマートフォンで冷蔵庫の設定(庫内温度等々)や運転状況の確認、レシピ提案、役立ち情報の提供、ほかの家電機器との連携など、新しい使い方の提案が始まっている。

 日立グローバルライフソリューションズでは、同社製IoT冷蔵庫を使った有料の見守りサービスを10月から開始した。

 単身高齢者向け見守りサービス「ドシテル」のリソースを活用したもので、冷蔵庫の開閉状況から、離れた家族だけでなく、同居している家族の状況も緩やかに見守ることができる。

 パナソニックでは冷蔵庫を調理家電の一つとして、冷凍技術などを駆使した〝冷凍調理〟の提案にも力を入れる。在宅の機会が増えて時短調理への関心が高まる一方で、料理のおいしさに対する関心も高まっていることに対応した。

 同社の主力シリーズには、通常冷凍に比べ5倍の凍結スピードを持つ「はやうま冷凍」を搭載している。

 から揚げやステーキ肉などの食材のおいしい冷凍保存のほか、〝自家製冷食〟の活用による時短調理提案、〝カット野菜〟活用などを提案する。

 三菱電機では、肉や魚などの生鮮食品を生のまま長持ち(最長約10日間)させる「氷点下ストッカーD A.I.」、冷凍ながら解凍いらずで、すぐに調理できる「切れちゃう瞬冷凍A.I.」(保存期間約3週間)、さらに長く(約1カ月)保存できる「冷凍室」と多様な冷凍機能を訴求する。