2020.12.04 【照明特集】快適なあかり環境の提案を重視

照明制御の国際通信規格「DALI」対応器具も増えてきた

 照明の需要期である年末に向けて、照明メーカーが販促を強化している。新型コロナウイルスの感染が拡大し、「第3波到来」とも言われる中、今冬は、自宅で過ごす時間がさらに増えることが予想され、快適なあかり環境の提案が重視されている。同時に、業務分野でもウイルス抑制・除菌ニーズに注目が集まっており、紫外線を使った製品が急速に広がり始めている。

 国内の照明市場は、メーカーからの出荷ベースでLED化率が4-9月で99.5%となり、一部の特殊照明を除き、ほぼLED化したと言える状況になっている。LED照明の特徴の一つである長寿命化により、蛍光灯や白熱灯などの従来光源に比べて買い替え需要は起こりにくくなっているが、それでも年末は変わらず照明の需要期として製品が活発に動く。

 コロナ禍となっている今年は、おうち時間を快適に過ごす提案が様々な製品で盛んだ。照明もそのうちの一つで、パナソニックは年末商戦を盛り上げる一環として、スピーカ搭載LEDシーリングライトなどを対象に、購入者に対するキャッシュバックキャンペーンに乗りだしている。巣ごもりが家庭内を見直す契機になっており、見逃されがちな照明の付加価値を提案したい考えだ。

 住宅分野の既設照明(ストック)に関するLED化率は、日本照明工業会(JLMA)の推計では9月末時点で45.1%。非住宅用屋内(52.9%)、非住宅用屋外(61.4%)に対し若干遅れている。キッチンやエクステリアなど一部リフォームを伴う箇所があるため、手間やコストからLED化に踏み切らない消費者が少なくないことも一因だ。ただ、新築住宅はLED照明が基本になるなど着実にLED化は進展しており、リニューアル案件も出てきている。

 一方、業務分野は、コロナ禍で設備更新が先延ばしになったり、リニューアル案件が一時停止になったりと影響が出ている。徐々に復調しつつあるが、飲食関連の厳しさは依然として続いており、照明への設備投資にも影響している。

 同時に、急速に立ち上がっているのが、紫外線を使った除菌ニーズだ。東芝ライテックは、人がいる環境でも照射できる、ウシオ電機が開発した紫外線によるウイルス不活化・殺菌技術「Care222」を搭載した除菌装置を開発し、来年1月から発売する。埋込タイプのユニバーサルダウンライト型で、首振り角度45度、水平回転角度340度に調整でき、照射範囲の自由度を高めている。オフィスや学校、商業施設など様々な人が集まる場所への導入を目指している。

 ウシオ電機の照明子会社ウシオライティングも、Care222を搭載した天井埋込型ダウンライトタイプを来年1月から発売予定。Care222は有人環境下でも使えることが売りだが、紫外線照射に対して過敏に反応する人も少なくないため、人感センサーや近接センサーなど多数のセンサーを搭載し、有人環境下での照射を最小化する仕組みも盛り込んでいる。

 新たな需要は立ち上がってきているが、照明市場全体では新型コロナの影響で出荷は伸び悩んでいる。4-9月の出荷台数は前年から1割以上ダウンし厳しさがにじむ。盛り上がりつつあった演出・景観照明も、コロナ禍による自粛により消え飛んだ格好だ。下期になって戻りつつあるものの、新型コロナ前の状態とは程遠い。

 そうした中、重視されるのが、JLMAが掲げるCSL(コネクテッド・スマート・ライティング)とHCL(ヒューマン・セントリック・ライティング)の方向性になる。ともにIoTやAI(人工知能)を生かしたもので、様々な機器とのつながりや人に優しいあかりの実現を目指すものだ。

 照明制御技術はその要とも位置付けられ、各社が注力している。これまでメーカーごとに独自技術で提案していたのをユーザーの声に後押しされる形で、照明制御の国際通信規格「DALI」に対応した照明器具も大手メーカーをはじめラインアップするようになってきた。より快適なあかり環境を整える上で照明制御は最適な手段の一つといえ、さらなる省エネにも貢献することから、ソリューション提案として取り組んでいる。

 三菱電機照明が開発した青空のようなLED照明も登場するようになり、LED照明の付加価値や快適性は以前より高まっている。単体というより今後は、制御技術と組み合わせた提案が業務分野では重要になってくる。