2021.01.15 メガソーラーの環境共生を模索デルタ電子、むき出しの山肌に開設し5年
パネルを設置する前の状態(15年2月)
電源機器製造のデルタ電子(東京都港区)が、兵庫県赤穂市で環境と共生するメガソーラーの運営に取り組んでいる。地元住民らと協力し、荒れ地だった斜面に下草を植えるなどし、開設して5年。太陽光発電の大量導入に向け、事業に絡む土砂の流出や濁水の発生などの問題が指摘される中、同社の事例は注目される可能性がある。
運営するメガソーラーは、中国山地の南東の裾野にある「赤穂エナジーパーク」(出力4MW)。小高い丘の斜面に同社初のメガソーラーを建設し、16年1月から運転を続ける。同社製のパワーコンディショナや蓄電池の製品テストなどに活用する目的で運営し、発電した電力は固定価格買い取り制度(FIT)で売電する。
建設地は、所有していた木材業者によるスギなどの伐採で、00年前後から斜面の表土がむき出し状態だった。斜面のふもとに沿うように広がる農業用水池には、荒れた山肌から流れ出た大量の表土が堆積していた。
同社は13年から実地調査を開始。地元住民の意向を尊重して開発する方針をとり、地元自治会側と自然環境の改善や維持、原風景の維持といった点で合意し、建設を始めた。
農業用水池に溜まった土砂を除去することから始まり、原風景を維持するため、造成などは行わず、森林伐採で露出した山肌に、架台に乗せた太陽光パネルを設置した。そのため、凸凹がある山肌に沿って様々な方角や角度でパネルが並ぶ。
表土の保水力を高めるため、高さ0.5-2メートルある架台の下には、下草を育て、周囲にはアカマツやヤマモモなど2000本の植林も行った。
発電量に想定外の結果
16年1月に系統と連係し運転を始めた後も、山を保全する取り組みを続けている。開所当初は、下草の生育が十分でなく、大雨の際には、表土が流されることがあったが、下草が十分に育った最近は、流出も止まったという。除草剤なども使用していない。
同パークの敷地約9万6000平方メートルのうち、パネルが並ぶのは全体の3分の1程度にすぎない。付近の伐採もしていない。そのため、朝夕には周囲の生育した樹木がパネルに影を落とすため、全てのパネルに光が当たる時間はほとんどないという。
発電量を維持するため、185台の分散型パワコンを活用。太陽光パネル約1万7300枚分を、370に細かく区分けして制御し、日陰になる影響を最小限に抑える工夫をした。
ただ、想定外のメリットも出ている。同パークの年間発電量は一般家庭約1100世帯分に相当する約4.9GWhが見込まれた。だが、5年間で実際の総発電量は約27GWhに達して、想定より1割程度多い結果だった。
同社マーケティング企画部は「1割増加の実績は説明がつかない」とし、「パネルは高温になると出力が低下する。発電所周辺の環境保全の取り組みが奏功し、特に夏場の気温上昇が抑えられ、発電量に影響した可能性がある」と話している。