2021.02.05 【5Gがくる】〈28〉5GにとってWi-Fi6は敵か、味方か? ②
再び、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う緊急事態宣言が発令された直後から、心なしか自宅のインターネットの通信速度が遅くなったような気がする。
集合住宅世帯の多くがテレワークにいそしんでいる様子がうかがわれる一方で、光回線の終端から私たちが使う端末までの間で速度が低下する、いわゆるラストワンマイル問題が気になる。このラストワンマイル問題を解決する方法として、CATV事業者など、地域の通信事業者によるローカル5Gサービスの開始を心待ちにしている人たちも少なくないと聞く。
そこで、ローカル5Gをどのように導入して問題を解決するのか、少し考えてみたい。
例えば、地域の通信事業者が電柱などに「ローカル5G基地局」を設置し、そのアンテナから隣接する建物や土地、公道、河川越しに、集合住宅(戸)やオフィスビル(フロア)内の「ユーザー端末」へ直接電波を飛ばせば、手っ取り早いはずだ。
しかし、この形態は可能だろうか?
19年12月に総務省が策定・公表した「ローカル5G導入に関するガイドライン」によると、「自己土地利用以外の場所、すなわち他者の建物又は土地等での利用については、固定通信(原則、無線局を移動させずに利用する形態)の利用のみに限定」とある。
つまり、スマートフォンなど、移動できるユーザー端末への「移動通信」形態は原則認められない。しかし、「固定通信」ならOKということになる。固定通信とは、光回線などの有線を利用することもあるが、ここでは、両端の無線局(アンテナ)が固定された形態を指している。
超高速な固定通信
仮に、ミリ波を利用したローカル5Gによる超高速な固定通信の形態にすればどうだろうか? 例えば「ローカル5G基地局」アンテナから、他者の建物や土地越しに、集合住宅やオフィスビルに固定された「ローカル5G対応ルーター」のアンテナへ電波を飛ばすということだ。いわゆるFWA(固定無線アクセス)と呼ばれる形態にすれば問題は解決するのではないだろうか。
あとは、いかに超高速性を損なわずにユーザー端末までデータを届けるかになる。
もちろん、集合住宅やオフィスの所有者自体がローカル5G免許を取得して宅内に電波を飛ばせればよいが、現実的ではない。そこで前回解説した「Wi-Fi6」が役に立つ。Wi-Fi6は宅内まで引き込まれている超高速な固定回線を超高速性を保ちながら小さなセル(弱い電波が吹いている範囲)内のユーザー端末まで延長できる。
効果的なケース
この超高速な固定回線を「ローカル5Gによる超高速な固定通信」と読み替えればよいわけだ。つまり、「ローカル5G&Wi-Fi6ルーター」を使えば、ローカル5Gの超高速性を損なわずにユーザー端末までデータを届けることができる。
これは、Wi-Fi6をローカル5Gの味方につける最も簡単かつ効果的なケースの一つになるだろう。(つづく)
〈筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問・国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏〉