2021.06.09 【ITサポートサービス特集】富士通コミュニケーションサービスAI活用し痛点分析ツール、顧客接点を高付加価値化
大濱 執行役員
富士通コミュニケーションサービスは、企業の顧客接点を改善し顧客体験価値(CX、カスタマーエクスペリエンス)を総合的に高める支援を強化している。主力のコンタクトセンター運用で培ってきたノウハウを生かし、顧客に寄り添った付加価値の高いサービス提供と顧客エンゲージメント(企業と顧客との信頼関係)向上に努めており、今年度は人工知能(AI)などを活用して、顧客接点をさらに高付加価値化していく。
多くの企業が顧客接点の見直しを重視し始めている中、同社はいち早くCX向上に主眼を置いた顧客支援サービスの開発に取り組んできた。
2020年12月には企業と顧客の接点における付加価値向上を支援する28のソリューションを体系化した「デザイン・フォー・CX」の提供を開始。企業が顧客に提供しているサービスプロセス全体の品質改善や最適化をするもので、顧客行動の分析から、サービス品質を高める支援まで、それぞれの企業の要望に合わせて対応している。
大濱広寿執行役員は「個別に対応してきたサービスやノウハウを体系化したことで、CXを求めている企業に対し分かりやすく提案できるようになった」と話す。
この数年はAIを使って付加価値を高めるサービス開発にも力を入れ、今年からは顧客の〝痛点〟を分析するツールの運用を始めた。
一般的に顧客が期待を裏切られる体験は痛点となり、顧客満足度を下げる要因になる。企業にとっては顧客の痛点やネガティブな意見、感情などを速やかに見つけ、対応していくことがCXを高めるための重要な課題の一つになっている。
中でも、主要な顧客接点の一つとなるコンタクトセンターに集まる膨大な情報から、顧客の痛点を効率よく拾い出すことは簡単ではない。
この課題を解決していくため、新たにAIを活用し顧客体験の痛点を分析するツールを開発した。ツールは、コンタクトセンターに集まる膨大な顧客の声をAIを使い客観的に効率的に分析するもので、「顧客の期待を損なう意見を数値化してあぶり出し、サービスや商品開発の手助けをする」(大濱執行役員)。
コンタクトセンターは、応答率や生産性向上にも取り組むため、顧客からの問い合わせなどの報告記録は要約されていることが多く、大濱執行役員は「顧客が発した細かい言葉や感情までを十分に分析できていない」とみている。
ツールではネガティブな意見や感情の自動抽出をはじめ、不満や不信など「不」の感情を示すテキストデータの数値化、重要語の抽出などをAIが行う。これにより今まで埋もれてしまっていたり、見つけられなかったりした顧客の声を効率よく把握し、企業に指南できるようになる。
既に社内の6業務領域で運用を始めている。大濱執行役員は「従来のように人手のみで痛点を見つけ分析し、結果を導き出す場合は数週間かかっていたが、このツールを使えば数日でできるようになる」と話す。今後はさらにツールの適用範囲を広げながらCX支援サービスの底上げをしていく。
痛点を見つけ解決に向けた仮説を立てられる人材も、現在の7~8人規模から拡大させる計画。
大濱執行役員は「痛点への関心は高いため、具体的に顧客の事業支援ができるような人材強化を図り、対応の幅を広げていく」と話している。