2021.06.25 【5Gがくる】ローカル5G簡単解説<47> 地域課題解決型ローカル5Gビジネスモデル⑤
孟子の言葉に「敵国外患なき者は、国つねに亡ぶ」というのがある。ここでいう「敵国」はさておき、「外患(がいかん)」とは外部から生じる厄介ごとのことだ。競争する国や外国との関係に心配事がないと、逆に緊張感を欠き油断を生じて国が滅亡する、という意味らしい。
渋沢栄一も「論語と算盤(そろばん)」など、彼の著書の中でこの孟子の名言を引用しており、わが国の商工業や学術技芸(学問と技術)などにおいて、常に外国と争って勝つという意気込みがなければならない、と説いている。
企業の内憂外患
さて、この孟子の言葉は、デジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル変革)に通じるところがあると筆者は考えている。というのは仮に「国」を「企業」に置き換えると、国内企業における今の内憂外患が浮かび上がってくるからだ。
例えば、新興国を含めたグローバル競争の激化や少子高齢化問題における人材不足、さらにコロナ禍によって余儀なくされたビジネス変革は、われわれがまさに今直面する課題にほかならない。
ところが筆者には「外部のビジネス環境が劇的に変化する中、常に困難とプレッシャーと闘いながらビジネス変革したほうが企業のサステナビリティー(持続可能性)が高いぞ」と孟子が申されているように聞こえる。そして、闘いを有利に進める戦略がデジタル技術という新たな武器を使うDXであるように思えてならない。
少し長くなったが、ローカル5Gを利用した地域課題解決型ビジネスモデルには「B2B2Xモデル」があり、「センターB」とも呼ばれる「地域の業種別サービス提供者」がDX推進のキーパーソンであると前回述べた。これは業種別サービス提供者が中心となってDXの戦略を練るということだ。
潜在する課題把握
具体的には、特定の業種をターゲットとして中小企業の現場から業種特有のニーズをヒアリングし、顕在する課題だけでなく潜在する課題を把握する。次に課題を解決する手法として超高精細映像(4K/8K)や仮想現実(VR)/拡張現実(AR)、人工知能(AI)&ロボットなどのデジタル技術を活用できないか検討し、いくつかの利用シーン(ユースケース)のイメージを描いてみることだ。
しかし、ここまでは机上の空論であって、中小企業が確信を持ってDXを推進したいと思えるような根拠はない。そこでビジネス変革のゴールでもある〝最終的な姿〟を明確にした上で、ゴールに向かって一つ一つの課題を解決する施策の〝根拠のある仮説〟を立てるのが肝要だろう。
根拠となり得るのは、現象や判断の裏側にある客観的な背景、関連データだ。もし、同業種の現場から収集したビッグデータから、根拠となるデータを発見することができれば、中小企業はDXを導入し「外患」という困難とプレッシャーに打ち勝つ意欲が湧いてくるに違いない。(つづく)
〈筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問。グローバルベンチャー協会理事。国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏〉