2021.07.02 【家電総合特集】テレビ巣ごもり需要が追い風、高画質・高音質・スマート化進む
4Kテレビを中心とした買い替え提案に力を入れていく
国内のテレビ市場は順調に拡大している。新型コロナウイルス感染拡大による〝巣ごもり〟需要が追い風になり、大画面高精細4Kテレビの販売が伸びるだけでなく、寝室や子ども部屋などに置く2台目、3台目の中型テレビの販売も好調だ。東京オリンピック・パラリンピックの開催も控えており、テレビ各社は最新製品を投入して販促に力を入れていく構えだ。
テレビ市場は2011年のアナログ放送停波とエコポイント終了に伴う特需の反動から長年低迷していたが、この1、2年で一気に回復基調になってきた。20年度(20年4月~21年3月)の国内出荷は572万4000台となり、600万台に迫るところまで伸びてきている。
高精細4Kテレビを中心に台数は伸びており、20年3月以降、14カ月連続で前年同期比増を記録。薄型テレビ全体の出荷も20年4月以降13カ月連続で前年同期比増となっている。有機ELテレビも好調で直近4月の出荷は同2.7倍と大きく伸長。薄型テレビ全体に占める4Kテレビ金額構成比は8割を超えるまでになっている(いずれも電子情報技術産業協会〈JEITA〉)。
テレビの買い替えサイクルに入っていることも後押ししている。内閣府の調査ではテレビの買い替えは10年程度になっているため、11年の特需の際に購入した液晶テレビやプラズマテレビの買い替えがこの1、2年で本格的に始まっているとみる関係者も多い。
主要テレビ各社の新製品を見ると、高画質化と高音質化、スマート化がより一層進んでいる。今年は画像処理エンジンがさらに強化されており、高画質化に向けて人工知能(AI)を活用する動きも活発だ。各社は独自のチューニングで、実際に目で見た風景と同じような映像表現を目指している。
例えば、東芝「レグザ」ブランドの薄型テレビを展開するTVS REGZAは人肌にこだわった画作りや実際にみた風景と同じ画作りを目指したチューニングをする。パナソニックはディープラーニング(深層学習)を活用したシーン認識アルゴリズムを搭載して映像を最適化した。ソニーは人間の脳と同じような認知特性を反映した知能を持つ統合認知型高画質プロセッサーを搭載し、自然で人の記憶に近い映像を映し出せるようにしている。シャープは超高精細8Kテレビで培った画像処理技術を4K液晶や4K有機ELテレビに展開し高画質化を図る。
高音質化でも各社がしのぎを削る。薄型テレビのデザイン性を損なわずに画質に負けない迫力のある音を出すために工夫している。特に重低音を出すためのスピーカーシステムや中高音域を心地よく再生するためのスピーカーボックス、デジタル処理技術を使ったチューニングなどで各社の違いが出ている。最新モデルの上位機種には、ドルビーアトモスなど立体音響に対応したモデルも増えてきており、注目したいところだ。
放送コンテンツだけでなくインターネット動画などの視聴を重視した機種も多い。巣ごもり需要でさまざまな映像コンテンツに触れる機会が増えていることから、ネット動画を簡単に視聴できる工夫や、あらゆるコンテンツを簡単に高画質で楽しんだりできるよう工夫をしている。
依然としてコロナの感染拡大は予断を許さない中、今後も家で過ごす時間を有意義にしていく提案は必要になるため、引き続き画質や音質、使い勝手といったテレビ本来の提案活動こそが鍵になってくるとみられる。