2021.07.09 【家電流通総合特集】21後半戦 わが社の家電流通戦略東芝コンシューママーケティング

オンラインを活用したキャンペーン

千田 社長千田 社長

スピード感を大切に

 東芝コンシューママーケティング(TCM)は、素早く状況判断し、柔軟性のある対応を行う。経営の効率化を目指して、営業部とカスタマーサービス統括部の7拠点を昨年に統廃合した。千田一臣社長は「業務に関するオペレーションを整理した。TCM内の少人数で決めていくスピード感を大切にする」と話す。

 同社の親会社・東芝ライフスタイル(LS)は、2016年6月末にマイディアグループ(美的集団)傘下となった。TCMもマイディアグループとして、昨年は新型コロナウイルスの影響を素早く見極め、対応に当たった。引き続き、コロナ禍特有の動きが求められる中、「新型コロナ感染者も発生したが、常に次の手とリスクを意識してきた」(千田社長)という同社は、1~6月でシェアの拡大に成功。マイディアグループのスケールメリットを生かした取り組みもあり、千田社長は「グループとして、安心だった部分もあった。今後はいつまでもその恩恵にあずかってはいられない」と気を引き締める。

 「為替や部品不足、部品の値上がりなどダイレクトに影響を受ける部分がある。われわれとして、マイディアに何ができるのか考える必要がある」と千田社長。特別定額給付金などの後押しがあった昨年6月と今年の6月の状況は同じではない。「6月だけを比べたら状況は厳しいが、5月は遜色なかった。この先も、今のコロナ需要を取り込んでいく」。

 全国に約3000店ほどある系列店「東芝ストアー」との連携も密に行う。東芝ストアーには2代目、3代目と事業承継を進める店舗も多い。千田社長は「創業者の方にとって東芝は人生そのもの。2世の方は生まれた時から東芝製品に囲まれており、『千田さんより前から東芝のファン』と言われるほど。アイテム数や規模からできることに限りはあるが、東芝愛がある」と話す。昨年夏と冬はともに全ての合展が中止となった。代わりに「特別大感謝祭」を実施。カタログやオンラインを活用したキャンペーンを行った。

 千田社長は「合展ができない状況に、どうなってしまうのかと心配の声もあったが、できることを行った結果、売り上げが維持できた。今後も仕掛け方を工夫していく」と、今夏も合展の代わりとなるキャンペーンに取り組む方針だ。

 今年4月に、これまで続けてきたテレビの販売を取りやめ、白物家電に集中する体制へと変化した。1~3月で東芝ストアーは販売とサービスにおいて、TCMとTVS REGZAそれぞれと関わる必要があった。4月以降はTVSに一本化された。

 千田社長は「巣ごもり需要もあり注目を集めるテレビの取り扱いがなくなったことで、東芝ストアーには迷惑をかける部分もある。今後は白物家電に特化できることを前向きに捉え、広げた看板を再確認しながら守っていく」。

 白物家電は、巣ごもり需要の後押しもあった。「エアコンが息を吹き返し、原動力になった」と千田社長。そのほか、冷蔵庫と洗濯機に関しては現在発売中の製品を年末にかけて大切に販売を続ける方針だ。「良い製品を作れば、多様化するニーズにも応えられる。アフターコロナに備えて、製品の価値を理解してもらえるよう訴求する」と話す。

 製品に関する勉強会も1回で終わりではなく、4、5回かけてオンラインでしっかり行う。冬に向けた準備にも余念がない。千田社長は「良い時期も悪い時期も続かない。事業には波が付きもの。だからこそ、ユーザー目線を大切に売りっぱなしにはしない。声を聞き、愛着を持ってもらえる取り組みを行う」と襟を正す。

ネットとリアル融合 キャンペーンを継続

 昨年初めて取り入れたネットとリアルを融合させたキャンペーンも引き続き行う。昨年は、キャンペーンサイトへのアクセス目標を18万と定めたが、実際は20万アクセスを超える成果となり、売り上げも計画通りだった。今年は、前年を超える35万アクセスを目標にしている。

 「家族のタイセツ」応援キャンペーン2021夏では、最大1万円のキャッシュバックの権利が当たる。ユーザーの購買意欲を刺激する取り組みだ。

 今年4月には、もう一つ変わったことがある。昨年1月に、9支社を7支社に、70支店を60支店に統廃合し、支社内では地域店と量販店それぞれの責任者を設けた。4月には、これまで支社として運営していた拠点を廃止。東部、中部、西部の3エリアに営業本部を置いた。千田社長は「昨年の段階で、地域店と量販店の担当分けは終わっているため、今回の変更による混乱はない。複雑だったオペレーションを変更し、簡略化した」と話す。

 また、新たにオンライン営業部を4月1日に新設。これにより、一律で素早く伝えたい基本情報が確実に伝わるようになり、各営業担当者は基本情報の説明に時間をかける必要がなくなった。

 「エリアや店舗によって状況が違う。より多様性に合わせた営業ができるようになった。営業の質が上がる」と千田社長。コロナ禍で進んだオンライン化の波を捉えつつ、柔軟性とスピード感を大切に、進化を続ける。