2021.07.09 名古屋大 脳型光記憶素子を発見重要な光情報だけを検出・記憶

グラフェン/ダイヤモンド配列構造による光情報の検出・記憶実験。I字(光刺激:強)は長期記憶されたのに対し、L字(光刺激:弱)は短期記憶された後、すぐ忘却された

新型光コンピューターなど開発期待

 名古屋大学大学院工学研究科の植田研二准教授らの研究グループは、グラフェン/ダイヤモンド積層界面が、重要な光情報だけを選択的に記憶し、不要な情報を忘却する、脳のように動く光記憶素子となることを新たに見いだした。

 人間の脳では神経細胞のつなぎ目であるシナプスが外部刺激によって結合強度を変更することで、情報の記憶・忘却が切り替わる。

 開発したグラフェン/ダイヤモンド素子は、シナプスと同様に、光刺激の強弱に応じて記憶保持時間が切り替わる特性を待つ。一つの素子で人間の目と脳の機能を併せ持つことが明らかになった。

 シナプスでは電気的な刺激で結合変化が起きるが、同素子は光刺激で結合強度の変化が起こるため、画像などの光情報が直接検出され、光刺激の頻度に応じて自律的に記憶・忘却されることが大きな特徴。素子全てに同時に光が照射され、光検出・記憶動作が全素子で同時並列的に行われるので高速動作が期待できる。

 具体的にはグラフェン/ダイヤモンド6素子を画素として用い2×3型で配列した構造で、画像(文字パターン、IおよびL)の検出を試みた。

 Iの場合はI字のパルスを多数照射して強い光刺激を与える形(重要な情報に対応)とし、Lの場合はL字のパルス光を少数照射し弱い刺激を与える形(不要な情報に対応)とした。結果的にLパターンは記憶後すぐに忘却(短期記憶)されたのに対し、Iパターンは長時間記憶(長期記憶)されることが分かった。

 グラフェン/ダイヤモンド配列構造がイメージセンサーとして機能しており、加えて光刺激の頻度(情報の重要度)に応じて光情報が選択的に記憶・忘却されることを意味する。

 この成果により、光刺激の頻度に応じて、画像などの光情報を取捨選択して瞬時に記憶する新型イメージセンサーなどの作製が可能となる。膨大な情報を自動で取捨選択し、重要な情報だけを検出・記憶、即時処理する新型光コンピューターや高性能カメラの開発につながると期待される。