2021.09.01 【防災の日特集】多発する災害で蓄電システムに注目脱炭素化も追い風に

世界市場、26年には3倍以上に伸長

 蓄電システムは、防災のための設備として注目されるのに加え、再生エネルギー拡大などの追い風もあって成長が続いている。

 矢野経済研究所の調査によると、定置用蓄電池(ESS)の世界市場は、2020年の出荷容量見込み約2万8000MWhから、26年には約8万9000MWh余りと、3倍以上に伸びると予測されている。

 また、日本電機工業会自主統計(6月まとめ)によると、定置用LIB蓄電システムの出荷実績(容量)は、18年度49.7万kWh、19年度81.4万kWh、20年度88.5万kWh。累計容量は345.3万kWh。

 蓄電システムビジョン(Ver.6、4月公表)によると、新築住宅への蓄電システム導入ポテンシャルは、設置件数でみると20年度の約1.7万から、30年度は12.9万と7倍以上に伸びると予測されている。

 こうした背景には、近年各地で多発する豪雨や台風の被害、強風、地震といった災害に伴う停電に備える意味でも、非常用電源として、蓄電システムが注目されている状況がある。

 家庭だけではなく、事業継続性の意味からも、非常用のバックアップとして、自治体や企業などで導入する動きも相次いでいる。

 また、空港をはじめ交通関係のハブになる場所でも導入の動きが進む。施設側自身の備えに加え、いざというとき利用者向けに携帯端末の充電などのサービスを提供することも想定されている。

 さらに、世界的に進む脱炭素の流れや、日本政府が掲げる50年カーボンニュートラルの目標を踏まえ、再生可能エネルギーの導入が拡大している事情がある。

 特に一般住宅向けは、再エネの固定価格買い取り制度(FIT)が終わった後も、いわゆる「卒FIT」のユーザーが蓄電システムを設けることで、各家庭の消費用に備えることが提案されている。

 一方で、蓄電システムの普及には課題もある。価格や性能、安全性などが、ユーザー側に十分伝わっていない面がある。

 例えば、使用開始当初は高い容量の仕様となっていても、年数を経ると、しだいに劣化が進む場合もある。使用状況や設置環境などによっては、性能が十分発揮できなかったり、性能の劣化が進んだりする場合もある。そうした「寿命」も加味して、トータルに判断される必要がある。

 また、各家庭や事業所などで使われるだけに、万一の火災事故などがあっては困る。

 「長期的な性能や安全性の観点からコストを考えられるよう、メーカー側も利用者に情報を提供し、啓発していく必要がある」と大手事業者はいう。

 正しい使い方が周知されるとともに、安全性や性能の目安が分かりやすく示される必要がありそうだ。