2021.10.28 【中・四国版】ルーチェサーチ(広島市安佐南区)無人航空機で高密度測量

同社製品を持つ渡辺社長

同社ラボ内同社ラボ内

 ルーチェサーチ(広島市安佐南区、渡辺豊社長)は、UAV(無人航空機)による地形・構造物の高密度測量、災害現場での活用を主業務にしており、2014年に日本で初めて首相官邸でドローンのデモフライトを行い、第7回ロボット大賞(国土交通大臣賞)を受賞するなど、測量業界で注目の企業だ。

 創業は11年。会社員だった渡辺社長が独立して同社を立ち上げた。UAVの開発、計測、販売の3本柱で営業している同社は、本社を広島市に構えるほか、東広島市にラボを、東京都品川区に事業所を展開する。

 社員は全体で18人と少ないが、開発設計から現場計測まで一社で担う技術力を持ち、他に類を見ない業態となっている。

 渡辺社長は「そこが当社の特徴であり強み。試作から改良まで自分たちで開発するからこそ、顧客の細かな要望にも柔軟に対応することができる」と話す。

 製作か計測どちらかに特化している企業が多い中でどちらも担う同社は、顧客の意見を聞いて現場に最も適した製品を作ることで支持を集めている。

◇現場や目的に適した製品を製作

 ドローンというと、小型のラジコンヘリほどの大きさを想像するが、同社製品は大人が両手で持っても重さを感じる大型。機体部分の大半はカーボンで作られているため、サイズに対して本体の重さはそこまではないが、バッテリーや高画質測量のためのミラーレス一眼レフ、高性能レーザなどを積載する。

 用途によって変わるセンサーなどに対応できるかが製作のカギとなり、さらに特定のセンサーを積める機種を求められた場合は、その重さや大きさを考慮し、現場や目的に適した製品を製作する。

 先方がドローン製作の依頼をしてきた場合でも、用途を聞いて車型の無人移動体を勧めるなど、目的に沿った提案製作も行っている。「UAVがどう使えるのか、まだ理解されてない部分も多いため、顧客の要望を聞きながら話を進めていくことも多い」(渡辺社長)という。

◇計測した画像解析も担う

 軸となる業務は、ドローンなど移動体による地形・構造物の高密度計測。計測した画像解析も当社が担う。社員の部門分けはほとんどしておらず、それぞれの得意分野を生かして開発から現場までの全工程に対応する少数精鋭だ。

 森林計測や橋の点検支援、気象観測まで幅広く行っており、業種やジャンルを問わず活用され始めている。より多くの現場の人に活用してもらうため、自社製品の販売も行っている。

 同社にとって最も関係が深い顧客は、工事現場など地形観測を必須とする土木業界だ。

 広範囲の現場でも、30ミリメートル単位の鮮明な3次元データを取り確認することができる。人力で2週間ほどかけて行っていた調査も、UAVを利用することで、画像解析まで含めて数日で終わらせることが可能だ。

 14年の広島市豪雨災害をきっかけに国や自治体から依頼を受け、災害現場にも活用されるようになった。大規模災害でのドローン発動はこの時が国内初と言われている。現在は中国地方整備局とも災害協定を結んで、地震や豪雨の際などにも活躍している。

◇「面白い×当たり前」

 「面白い×当たり前」をテーマにしている同社。まだ浸透していないドローンの活用性を探り、その新しさ、面白さを当たり前にする活動を心掛けている。

 渡辺社長は「少しずつドローンという名称や存在が世間一般に認知されてきたが、活用の幅は未知数だ。今まで手が付けられていなかった市場を私たちが開拓し、課題解決において便利さが当たり前になる段階まで発展させていきたい」と意欲を見せた。