2021.11.02 【ケーブルテレビ特集】地域DXの担い手に

 ケーブルテレビ(CATV)はニューノーマル(新しい日常)時代の新しい地域社会の構築に向けた社会インフラとして、地域の課題解決に貢献するケーブル事業の新たな挑戦に向けた取り組みを強化してきた。CATV加入世帯数は、昨年末で約3117万世帯、世帯普及率は約52.4%に達し、日本総世帯数の過半数を超え、地域では重要なインフラにまで成長してきた。今後、CATVを取り巻く環境の変化に対応するため、ICTを活用して人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる「地域DXの担い手」となり、事業領域の拡大と新たな顧客の創造を目指している。

 いま社会はIoTや人工知能(AI)などの最新のテクノロジーを活用し、人々の快適な暮らしとあらゆる社会課題の実現を目指した、Society5.0を目指している。CATVを取り巻く環境も急速に変化し、地域におけるCATVの役割も大きく変わりつつある。日本ケーブルテレビ連盟(JCTA)は、こうしたCATVを取り巻く環境変化を踏まえて、今後、地域として共に成長し、地域で役に立つ業界として、さらなる発展を遂げるために、2030年に向けて業界が担うべきミッション、目指すべき姿およびアクションプラン「2030ケーブルビジョン」を策定している。

 「地域DXで地域を豊かに、人々を笑顔に」をビジョンとして揚げ、「放送」「コンテンツ」「ネットワーク」「ワイヤレス」「ID」「サービス・ビジネス」の6分野について、30年に目指すべき姿と六つのアプローチを示し、新たな事業領域を創出し、顧客創造を図る。

 CATVの20年の市場規模は約1兆3000億円。6分野のアクションプランを推進していくことで、30年には1兆7000億円を目指す。CATVはコンテンツとインフラの両方を持つ事業者として、地域ニーズに総合力で臨み、新たなビジネスの推進を通じて、放送のみならず、医療、セキュリティー、観光などあらゆる分野のデジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル革新)化を推進し、CATVが「地域DXの担い手」となることを目指していくとした。

ローカル5G

 放送に始まり、インターネット、電話と順調に裾野を広げてきたCATV事業者は、第四の柱として無線通信サービスに取り組んできた。日本ケーブルテレビ連盟を中心に、14年「新サービス・プラットフォーム推進特別委員会」の傘下に「無線利活用WG」を発足し、MVNOサービスや地域BWA、無線LAN(Wi-Fi)などの無線サービスの活用への取り組みを本格的に進めている。

 特にCATVの有線網、無線網を生かし、地域住民が住みやすい環境やさまざまなサービスの提供を目指す方針で、ローカル5Gのシステム構築と運用支援を今後の大きな事業機会と捉えて積極的に取り組んでいる。ローカル5Gが有線のFTTH化、無線(MVNO、地域BWA、Wi-Fi)に加わり、地域課題の解決の加速化とともに、地域活性化に期待されている。

 19年に立ち上げた業界統一無線コアなどを提供するグレープ・ワンは、ローカル5Gを活用した無線プラットフォーム事業を展開。同社はCATV事業者向けに無線サービスにおける基幹システムとなる無線コアネットワークを構築し、回線サービスを提供。基地局や端末の販売・運用・保守に至るまで総合的なサービスを提供している。

 秋田ケーブルテレビでは秋田県立大学フィールド教育研究センター内にローカル5G、地域BWAなどの複数の無線システムを組み合わせた次世代ワイヤレス環境を構築し、産官学の連携体制の下、スマート農業の各種実証や雪の影響確認など、農業DXを中心に村全体のスマートシティー化を目指している。今後、CATV網とローカル5Gを組み合わせることでさまざまな地域サービスやコンテンツサービスを展開でき、新たなビジネス機会が期待できる。

医療DX

 日本でも超高齢社会を迎え、高齢者の通院負担や老老介護、医師の地域偏在の社会問題が深刻になっている。その解決策として、医療へのアクセスと在宅患者のQOL(クオリティー・オブ・ライフ)向上を可能とするICTを活用した遠隔医療への期待が高まっている。

 今年5月に、医療関連事業者とともに、地域住民が自宅で簡単に診療・服薬指導を受けられる「地域スマート医療コンソーシアム」が設立。オンライン診療サービスの提供に携わる医療、保険調剤薬局、ヘルスケア、CATVの各事業者などが参画し課題解決に取り組む。CATVのインフラを活用することで、医療DXの推進にも期待されている。さらに、5Gを活用した遠隔診療や遠隔リハビリ指導なども実証実験が行われており、医療界においても5Gは注目されている。

 JCOMはテレビを使ったオンライン診療サービス「J:COMオンライン診療」を7月から提供を開始。こうしたCATV事業者が地域医療のプラットフォーマーとして、地域医療の課題をパートナーとともにオンラインとオフラインの力で解決し、地域医療の持続的な発展に貢献していくことを目指す。

ケーブルコンベンション/ケーブル技術ショー

今年の「ケーブル技術ショー」

 国内最大のCATV業界のイベント「ケーブルコンベンション/ケーブル技術ショー」が6月、リアル技術展示会とオンライン展示会のそれぞれの特長を生かしたハイブリッド型展示会で行われた。

 ニューノーマル時代での地域の課題解決に向けたケーブル事業の新たな挑戦を支える技術ソリューション・製品・講演が披露。近年、CATV業界でも「モノ」から「コト」へのサービス化に大きな注目が集まっている。これまでの技術・製品・ノウハウを活用したソリューション提供に力を入れている、今後も次世代インフラシステムやサービスの拡充・強化が進むことが期待される。