2021.11.10 「街の電器屋さん」の灯を消すな!松下幸之助商学院 きょうも若者が修練に励む

松下幸之助商学院の修業生は集中力や礼儀を養うため、茶道も学ぶ。3日の学院祭で稽古の成果を披露した

 年々減少する「街の電器屋さん」。家電量販店の台頭やEC販売の普及が影響し、のれんを下ろすことを余儀なくされる店が多い。しかし、時代の変化を受け入れながらも小売業界の厳しい競争に立ち向かおうと、鍛錬に励む若者たちがいる。松下電器(現・パナソニック)の創業者である松下幸之助氏の哲学を継ぐ松下幸之助商学院(滋賀県草津市)の修業生たちだ。

 今年5月に入塾した第52期の修業生は、北は北海道、南は福岡まで全国から集まった18~27歳までの17人。高校を卒業したばかりのまだ若々しい顔立ちの青年から社会人経験者まで、年齢やバックグラウンドはさまざま。しかし、「家業の電器店を継ぐ」という同じ志を胸に、学院へやってきた。

 同学院は1970年、全国のナショナルショップ(現パナソニックショップ)の後継者を育成するために幸之助氏が設立した。巣立っていった若者は約5000人に上る。

 入塾した若者たちは1年間に及ぶ合宿生活の中で、電器店の一級経営者になるために切磋琢磨(せっさたくま)する。学ぶのは、「知育」「徳育」「体育」。規則正しい生活を送り、早朝の整列駆け足から一日の修業が始まる。健やかな心身を鍛え、最新の知識や技術を身に付ける。

 1年間の修業の折り返しに当たる今月3日には「商学院祭」が開催され、52期生が内外の講師を招いて日々の修業の成果を披露したほか、アトラクションイベントで盛り上がった。

 修学生の一人、森浦雄大さん(22歳)は学院生活について「他店研修が印象的。実家の店の顧客層は高齢者が中心だが、研修へ行った店は都心部で比較的小さな店。違う環境での経営を学び、多くの知識を得られた」と振り返り、「成功するには競合店と同じやり方では駄目だ。自店に帰ったら電器店としてのアフターケアを強みに商売に励むつもり」と力を込めた。

 52期生は2022年3月に同学院を卒業し、新たな一歩を踏み出す。