2021.09.01 食料品や乾電池 消費しながら備蓄「ローリングストック」で災害に備える
電池のローリングストックの考え方
きょうは「防災の日」。9月1日は関東大震災が発生した日であり、また9月は台風シーズンが到来する時期でもあることから1960年(昭和35年)の閣議で決まった。1982年(昭和57年)からは9月1日を含む1週間を防災週間として、各地で防災関連の行事が行われている。この数年は大雨や台風など自然災害に見舞われることが多く、防災に対する関心が高まっているが、災害時の対策はどこまでできているだろうか―。今、「ローリングストック」と呼ぶ手法が注目され、少しずつ浸透してきているという。
ローリングストックは、保存食や消耗品、備品などを、普段少し多めに買っておき、使った分を新しく補充する方法だ。最近は食料品や飲料なども長期保存できる商品が増えてきているものの、一度防災グッズをそろえると、そのまま放置している人も多いと聞く。いつ発生するか分からない災害に対して、日ごろから気に掛けておくのは至難の業だが、いざ災害時に食料や消耗品などを確認したら賞味期限が過ぎていたということになったら目も当てられない。そこで日々の生活に取り入れたいのがローリングストックだ。
食品関連では農林水産省がローリングストックを提唱しており、非常食と日常食を多めに備え、消費しては買い足すというサイクルを作ることを勧めている。缶詰やレトルト食品なども一定数を備えて消費しながら備蓄すると災害時などでも一定の食糧を確保できるようになる。ここで注意したいのは備蓄量だ。一般的には備蓄量は最低3日分と言われている。これは人命救助で、人が飲食せずに生きていられる時間が72時間(3日間)という「72時間の壁」に起因している。災害時から72時間の間は人命救助を中心に行うため、物資の補給などは後回しになる。そこで最低3日間は自力で生き延びる必要があるため「3日分は備蓄した方がよい」と言われているわけだ。
食料品だけではない。ティッシュペーパーやトイレットペーパーなども多めに備蓄しておく方が無難だ。さらに意外と見落としがちなのが電化製品関係だ。私たちの生活は電気なしには成り立たない。これが停電したらどうなるだろう。テレビも見られないし、照明もなくなってしまう。水を温めたいときにはコンロも必要だ。そのため防災のための備品として懐中電灯やLEDランタン、携帯ラジオなどを用意している人もいるだろう。最近はスマートフォンも必需品になっている。カセットコンロなどもあるとよい。
こうした懐中電灯やラジオ、充電器などに不可欠なのが乾電池だ。乾電池もローリングストックするとよいと言われている。日本気象協会は「知る防災」プロジェクトを推進しており、その中でローリングストックを提唱。応用編として乾電池やカセットコンロのカセットなどもローリングストックすることを勧めている。日本気象協会の「知る防災」に協賛している電池メーカーのFDKも電池のローリングストックについて早くから啓蒙(けいもう)する。
最近の乾電池は長期保存を実現し、5~10年の長期保存ができる。特に高機能アルカリ乾電池では10年長期保存や液漏れ防止構造を採用し、長期間保存していてもすぐに使えるような品質と性能を持たせている。そうはいっても電池を10年間備蓄し使わなかったら交換するというのは効率的ではない。そこでFDKでは「電池を日常で使いながら一定数を備蓄し、使ったら補充するようにしようと提唱している」という。これにより、いざというときにも使用推奨期限に余裕のある乾電池をすぐに使えるようになる。
もちろん電池は直射日光や湿気を好まないため、暗所での保管は必須だ。加えて電池を使う電化製品の保管にも注意が必要で、長期間使用しないときは電池を必ず抜いておかなければならない。懐中電灯に電池を入れたまま保管しておき、いざ停電で使おうとしたら電池が液漏れして使えなかったという経験をした人もいるだろう。こうならないためにも乾電池は抜いて保管することが求められている。
食料品と同様に電池にも備蓄量の目安がある。日本気象協会は5人家族が3日間過ごすための乾電池は約50本の備蓄が目安だとしている。単1形から単4形までの乾電池が一般的に使われることが多いが懐中電灯などには単1や単2が、ラジオなどには単3や単4が使われている。スマホの乾電池の充電器も単3などを使うことが多い。こうしたバランスを考えながら備蓄するのがよいだろう。
防災の日を機会に、いま一度家庭内の備蓄についてローリングストックの観点で考えることで、災害時の対応力と日ごろからの防災への意識付けをしていきたいところだ。