2021.11.24 【5G関連部品・材料特集】部品各社、端末の技術進化に対応

 電子部品・材料メーカー各社は、第5世代移動通信規格5Gにより高機能化が進むスマートフォンや、5G通信基地局などに照準を合わせた技術開発を活発化させている。スマホの高機能・高性能化は、搭載部品への技術要求を一段と高度化させており、ミリ波対応の部品開発の動きも加速している。電子部品各社は、ワールドワイドでの5G端末の普及が本格化する中で、今後も積極的なビジネスを展開する。

 スマホの世界需要は年間14億台前後に達する。スマホの世界出荷台数は2016年をピークに、17年以降は横ばいから漸減傾向にあるが、22年以降は再び増加傾向での推移が期待されている。加えて、スマホ全体に占める5G端末の比率は20年から21年にかけて大きく上昇し、22年には5割を超える見通し。5G化に伴うスマホの高機能化は、搭載される部品のハイエンド化や新規部品搭載を促進し、端末1台当たりの電子部品ポテンシャルを押し上げていくことが期待されている。

 最近の5Gスマホ市場では、通常の「Sub6(サブシックス)端末」に加え、「28ギガヘルツ対応ミリ波端末」も徐々に市場投入されている。韓国サムスンのギャラクシー旗艦モデルをはじめ、米アップルが今年9月に発売したアイフォーン13でも、米国市場向け機種は28ギガヘルツに対応している(日本市場向け端末は28ギガヘルツ非対応)。日系スマホメーカーなどでも一部、28ギガヘルツ対応機種を投入している。

 世界のスマホ市場は、近年は買い替えサイクルの長期化が進む中で、大手端末メーカー数社による寡占化の傾向が強まっている。そうした中、18年以降、米中貿易摩擦が激化し、米政府による中国ファーウェイ規制が進展した結果、20年はファーウェイのスマホ生産台数が大きく落ち込むなど、端末メーカー間のシェア変動も激化している。

 加えて、20年序盤は新型コロナウイルス感染症拡大がスマホ市場にも影響を与えたが、20年は春から夏にかけて需要が回復し、20年後半から21年春ごろまでは、スマホ用部品の受注も高水準が継続した。21年の夏以降は中国系スマホで在庫調整がみられたが、7月ごろから米アップルのスマホ新モデル需要が立ち上がり、スマホ用部品のグローバル全体での需要は今年も比較的堅調に推移している。今年度下期以降は中国系スマホも調整一段落からの反転が期待されている。

 今夏以降は、新型コロナデルタ株感染拡大に伴う各社のASEAN工場ロックダウンや、半導体不足がややスマホ生産にも影響を与えているが、全体としては影響は軽微にとどまっている。

 最近の新型スマホは、ディスプレーの大画面・高精細化・フルフラット化や、内蔵カメラの高性能化と搭載数量増加、伝送速度向上やメモリーの大容量化、内蔵バッテリーの性能向上などが進み、新たなセンサーや機能モジュールの搭載が進んでいる。5Gスマホ向けに、小型のミリ波帯対応デバイスの開発も活発化している。さらに、有機ELディスプレー搭載フォルダブル端末も発表されるなど、次世代スマホの開発競争に拍車が掛かっている。

 端末の技術進化に対し、電子部品各社は既存部品のブラッシュアップとともに、新機能搭載や5G化に対応する新たな電子部品開発に全力を挙げる。

回路部品

超小型チップ部品搭載化率向上

導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサー

 スマホでは小さい面積に多機能を搭載するため、高密度実装化が進展している。特に5G(第5世代移動通信規格)スマホ内蔵回路部品は、超小型チップ部品の搭載化率が一段とアップしている。

 プリント配線板は、現在、エニーレイヤー工法のビルドアップ多層板が使用されるが、ローコスト機種から高機能機種まで基板の層数と微細化の仕様は異なる。高機能機種では10層以上、L/S=50マイクロメートル/50マイクロメートル程度まで微細化している。

 積層セラミックコンデンサー(MLCC)は、高級機では端末1台当たり1000個以上が搭載され、チップ抵抗器も400個内外が実装される。これらには静電容量や抵抗値、さらには定格電力、定格電圧などにより、各種サイズが混在している。

 高密度実装化をサポートするため小型で大容量化するMLCC、小型で高耐圧化するチップ抵抗器を使用する傾向が高まり、1608から1005サイズの搭載点数を削減し、0603サイズ、0402サイズなどの超小型チップの搭載比率を上げる方向にある。

 電源回路を省スペース化するためにパワーインダクターの小型化も進展している。フェライト系から大電流対応で有利なメタル系の新製品開発が巻線、薄膜、積層の加工工法で活発化している。

 水晶デバイスは5Gスマホ向けにパッケージの小型・薄型化が進展。温度センサー内蔵水晶振動子は1612サイズで厚み0.45ミリメートルなどの超薄型品が開発された。1210サイズへと小型・薄型化技術が進む。

接続/変換部品

使い勝手向上の新製品開発推進

15A対応基板対FPCコネクター

 接続/変換部品メーカー各社は、スマートフォンやウエアラブル端末などのモバイル機器向けに、一層の小型薄型化や高速伝送対応、急速充電、使い勝手の向上などを追求した新製品開発を活発化させている。

 スマホ内部接続用コネクターは、低背・狭ピッチ・省スペースの基板対基板用やFPC接続用コネクターの開発競争に拍車が掛かり、嵌合(かんごう)高さ0.5ミリメートルの0.4ミリピッチ基板対基板コネクター、0.35ミリピッチ基板対基板コネクター、シールド付きFPCコネクターなどのラインアップ拡充が進む。特に、内部接続に多用される基板対基板用は、より狭ピッチの0.3ミリピッチ品も本格量産が始まりつつある。

 5Gスマホ向けに、優れた高周波特性かつ小型化を実現したマルチRF対応基板対基板コネクターなどの開発も進んでいる。5Gのミリ波帯を視野に、32ギガbps対応小型高性能同軸ケーブルコネクターなどの開発も活発化している。

 電源用は、スマホバッテリーの大型化やパワーマネジメントの高度化に対応し、電流容量15A対応電源用基板対基板コネクターなどが開発されている。

 変換部品は、スマホ同梱ワイヤレスイヤホンの開発や、MEMSマイクロホンの超小型・高音質化が追求されている。

5G関連材料

新製品や新グレード開発に全力

5G基地局向けボンディングフィルム

 電子材料メーカー各社は、5G通信対応デバイス向けの電子材料の開発、市場投入を加速させている。5G用デバイスで求められる低誘電率や低誘電正接、半導体実装に耐えられる耐熱性などを満たす新規材料開発により、5G市場(インフラ/端末)での事業拡大を目指す。

 5G通信の周波数は、ハイバンドでは28ギガヘルツ近傍のミリ波帯域が使用される。このため最近は、5GのSub6に加え、5Gのミリ波領域に照準を合わせ、高周波対応や高速大容量伝送に対応するための電子部品・デバイス開発へのニーズが増している。5Gは同時多接続や低遅延といった特徴を持っていることから、IoTの普及促進への寄与も期待される。

 こうしたニーズに対応するため、化学材料メーカー各社は、5Gの基地局や端末などに照準を合わせた新製品開発や既存素材の新グレード品開発などに全力を挙げる。

 5G通信で使用される電子部品やデバイスで求められる低誘電率や低誘電正接、優れた耐熱性などを兼ね備えた素材の先行開発を進めることにより、5G関連材料ビジネスの積極的な拡大を目指している。

 5Gアプリケーション向け材料開発では、低誘電率や低誘電正接を実現し、機械物性や耐熱性にも優れる高周波プリント基板用絶縁材料や5Gアンテナ基板材料、高速伝送用電子部品向け材料などの開発が進む。

 各社は、精緻な分子設計などを行うことで、優れた低伝送損失を実現できる素材開発を追求し、大容量通信の安定化への貢献を目指す。

 さらに、加工のしやすさや接着性、電子部品・モジュールの小型化への寄与なども追求していく。