2021.11.26 【5Gがくる】ローカル5G簡単解説<66>北欧に学ぶローカル5G導入障壁の突破方法②

 ノキアとノキアベル研究所の「5Gビジネス・レディネス」リポートでは、第5世代移動通信規格5Gビジネスへの準備と題して、日本についても言及されている。

5G導入の障壁

 その中で、「5Gは日本の持続可能な経済成長とデジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル変革)の主要な推進力となる」とした上で、5Gの導入を妨げる障壁に「エコシステムの利用可能性」「教育と理解」「認識」「コストと複雑さ」「セキュリティー」の五つを挙げている。

 「そんなこと外から言われなくても分かっているよ」と言いたいところだが、所詮筆者も井の中の蛙。海外からあらためて指摘されると、ちょっと気になってしまう。

 確かにリソースの多くを海外から調達しているわれわれは、地震や大雨による大規模災害やコロナ禍など、サプライチェーンが寸断される脅威に直面していることは事実だ。

 だからこそビジネス環境が激変しても、すぐさま経営資源を再構成して事業を継続する、いわゆるダイナミック・ケイパビリティーを持つことは喫緊の課題とも言える。そのためにも高速な無線プライベートネットワークが必要であり、ローカル5Gはその最有力であるということは何度も述べてきた。

理解度の現状把握

 ここでは製造業においてローカル5Gはどの程度理解され、導入を検討されているのか、現状把握から始めてみたい。

ローカル5Gの認知度

 総務省は今年7月に「製造現場におけるローカル5G等の導入ガイドライン」を公表している。その中に同省が令和2年に行った全国の製造業を対象としたアンケート「5G時代における工場のワイヤレス化の実現に向けた方策等に関する調査研究」実態調査がある。

 調査によると、「ローカル5Gについて知っていましたか?」という設問に対し「知らなかった」と答えた企業が56%(小数点以下四捨五入)を占めている。「聞いたことがあった」を加えると80%となり、「知っていた」の20%を大きく上回っていた。

 「ローカル5Gの特徴のうち、既に知っていたものをご選択ください」という設問に対しては、最も高かったのが「高速大容量」で88%。「多数同時接続」(42%)、「超低遅延」(37%)、「企業や自治体が自ら局所的な5Gシステムを構築し、プライベートネットワークとして導入・利用が可能」(29%)と続いた。

 そのほか、「高セキュリティ」(17%)、「専用帯域による通信干渉の回避、稼働の安定性」(16%)、「導入及び利用にあたって総務省や地域通信局発行の免許の取得が必要」(12%)となった。

 どの特徴もローカル5Gを検討する際には最低限理解しておかないといけない知識ばかりだ。恐らく9割近い企業が検討さえ始めていないというのが現状だろう。

 ある意味、ローカル5Gは必要とされる製造現場にその姿さえ見せていない。両者の間には、「教育と理解」の障壁が立ちはだかっているわけだ。(つづく)

〈筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問。グローバルベンチャー協会理事。国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏〉