2021.12.24 【5Gがくる】ローカル5G簡単解説<69>北欧に学ぶローカル5G導入障壁の突破方法⑤

 江戸では庶民が内風呂を持つことはあまりなかったらしい。その理由は、当時の江戸は水の便が悪く、燃料のまきの価格が高かった上、ほぼ全ての建築物が木造のため火事を恐れていたからだ。

 そのため、関東平野特有の空っ風で毎日砂ぼこりをかぶっていた江戸では「湯屋」と呼ばれていた銭湯が大繁盛していたという。

 江戸時代から明治ごろまでの銭湯は、湯が冷めるのを防ぐため、浴槽への出入り口を板戸で仕切り、その下部を開けて身体をかがめて出入りする「石榴口(ざくろぐち)」というものがあったらしい。

 石榴口の中は真っ白な湯けむりでよく見えなかったというから、今でいうサウナと湯浴の中間みたいなものだ。そのため当時の銭湯は混浴でありながら、風紀が乱れなったとも聞く。

サウナで商談

 サウナ発祥の地と言えばフィンランドだろう。サウナの歴史は古く2000年前からあったと言われている。もともとサウナも混浴だったらしく、日本の銭湯文化とよく似ている。今でも街中に数多くのサウナが存在し、商談や会議が行われることも少なくないというから驚く。

 まさに利害関係や上下関係のない裸の付き合いで、フィンランドにおけるサウナは人の心を解放し、気軽に人と交流できるコミュニティーとなっているのだ。

 もう一つ、日本人とよく似ているものにフィンランド人の精神の基盤となっている「SISU(シス)」がある。これをあえて解説すると「勇敢で、粘り強く、忍耐強く、諦めない姿勢と態度」という意味になるらしい。

 これは、哲学のように思考するだけのものではなく、行動の伴う内面的な力であり、いわば「フィンランド魂」のようなものだ。このSISUは、ノキアの前会長リスト・シラスマ著『NOKIA 復活の軌跡』(早川書房)の中でも取り上げられている。

ノキアの復活

ノキアの復活

 当時、ノキアはスマートフォンの開発に乗り遅れ、倒産の危機がささやかれていた。ところがノキアは心臓部であったD&S(携帯電話)事業を手放し、ノキアシーメンスネットワークスの完全所有権の購入とアルカテル・ルーセントの買収によって、グローバルテクノロジーリーダーへと変貌し、見事に復活を遂げた。

 新しく生まれ変わったノキアは、通信機器メーカーとして確固たる地位を築き、現在は5Gによる新たな社会をリードしている。同著の原題は『Transforming Nokia』。まさに「ダイナミック・ケイパビリティー」におけるトランスフォーミング力であり、競争優位性を持続可能なものにするため、組織全体を変容させる能力そのものだ。

DXを後押し 

 SISUの変革精神は、ノキアの5G機器とクラウド型ローカル5Gソリューションと共に、われわれのデジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル変革)推進の後押しになるに違いない。(つづく)

〈筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問。グローバルベンチャー協会理事。国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏〉