2022.02.01 太陽光パネルのリサイクル事業 、TREホールディングスが参入長野県に専用設備、福島県でも準備
油圧式フレーム外し機
廃棄物処理などを手掛けるTREホールディングスグループが、普及が進む太陽光パネルのリサイクル事業に乗りだした。グループの信州タケエイ(長野県諏訪市)が1月から事業を開始。大量廃棄が予想される2030年以降に備える。福島県でも同様のリサイクル事業を始める計画を進めている。
再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(FIT)などが始まって急速に拡大した太陽光発電では、製品寿命が25~30年程度とされる太陽光パネルの処理が課題として挙げられている。30年ごろから、交換や廃棄などで排出量が大幅に増えることが予想されており、「処理が追い付かないと見込まれている」(TREホールディングス経営企画部)。
ただ、「複雑な構造のパネルを専用設備で処理するラインを持つには、設備投資が必要。一定程度の事業規模がある企業などに限られている」(同部)のが現状だ。長野県や近隣地域ではまだ、パネルの中間処理を行う企業はないという。
そうした懸念から、グループでは数年前から準備し、このたび設備などが完成。長野県から廃パネルを処理する許可を得た。さらに、グループ企業の相馬事業所(福島県相馬市)でも展開する準備を進めている。
パネルの処理は、まずケーブルなどを解体した上で、「油圧式フレーム外し機」でアルミ枠を取り外す。残るパネルは「手動式カバーガラス剝離装置」でガラスを回収。含まれる鉛なども適正に取り出す必要がある。なお、検品をして状態が良いものはリユースする。
自然災害で被災したパネルなどが廃棄されるケースも出てきているといい、「既にニーズはある」(同部)。
TREホールディングスは、建設系廃棄物のリサイクルなどを手掛けるタケエイと、金属リサイクルを中核に使用済み自動車や家電のリサイクルなどを総合的に展開するリバーホールディングスが経営統合し、21年10月に発足した。
グループは再エネ事業自体にも注力しており、東北地方に4カ所、首都圏に2カ所持つのが木質バイオマス発電所。多くが出力7000kW前後だが、千葉県市原市には4万9900kWに及ぶ大規模設備もある。
首都圏では建設系廃棄物の木くずなどを活用する一方、東北では近隣の森林の間伐材を主に使うなど、独自性を出している。
処理に追い風、費用積み立てへ
太陽光パネルのリサイクルに追い風となる制度が控えている。太陽光発電設備の廃棄処理費用の事前積み立てを義務化した国の仕組みが7月から運用開始となる。必要な時期に一定額が確実にプールされるよう、原則、発電事業者から「源泉徴収的」に外部に積み立てられる仕組みだ。
太陽光発電事業は参入障壁が低く、さまざまな事業者が取り組みやすい。そのため、パネルの所有者が変わることも起きやすい。鉛などの有害物質が含まれるパネルなどもあり、地域から不法投棄などを懸念する声が上がっていたという。
国は18年4月、FIT認定の際に発電事業者が事業計画を策定するためのガイドラインを改訂。事業用の発電設備(10kW以上)について、廃棄費用の積み立てを順守義務化した。
しかし、積み立ての額や時期などの判断は事業者に任されており、事業者内部での積み立てを想定していたことから、「流用が容易にでき、必要なときに必要な額がきちんとプールされていることを担保できるか」(資源エネルギー庁新エネルギー課)など、適切な運営に疑問が残ったという。そこで、改めて経産省の審議会で、確実に積み立てられる制度の詳細設計が行われた。
制度は、FITや、今年4月に移行するFIPの認定を受けた発電事業で、出力10kW以上が対象となる。既にFIT認定する際、売電価格の算定時に廃棄などの費用が盛り込まれており、そこでの費用分を積み立てる。売電を終える前の10年間が積み立て期間だ。
FITでは、大手電力会社など発電事業者が決まった価格で売電する。その対価が毎月、事業者側に支払われるが、その際に積立額分を差し引いて払われる「源泉徴収的な」仕組みが採用された。全国的な電力系統運用業務などを担ってきた「電力広域的運営推進機関」が積立金を管理し、実際の廃棄処理で不足した分は事業者側が負担する。
こうした積立金は、リサイクル費用にも充当できる。ただ、現状では埋め立て処分費よりもリサイクルコストの方が高いとされ、経産省などはリサイクル業者に対して、リサイクルコストを低減させる技術開発への助成なども進めているという。エネ庁新エネルギー課の担当者は「埋め立て処分費の方が安価であれば、発電事業者はそちらに流れやすい。リサイクルコストを低減させることで、事業者が合理的にリサイクル処分を選択できるようにする必要がある」と話している。