2022.02.25 【5Gがくる】ローカル5G簡単解説<76>アフターコロナのDX&ローカル5Gを占う④

 北京冬季五輪の聖火が無事役目を終え、記憶の中へと消え去った。と同時に、眠っていた30年前の中国の光景がひょっこり浮かんできた。

 中国に納入したデジタル交換システムのデータ運用を現地で中国人技術者に教えていたときのことだ。彼らは1カ月の長期研修の間、毎日2時間の昼休みを取っていた。

 いったん自転車で近くの家へ帰り、ゆっくり昼食をとったあと昼寝をしてから再び出勤し、午後の仕事に集中するのだ。確かに、彼らは午後も生き生きと研修に参加し、高いパフォーマンスを維持していた。

 それに対して、昼寝の習慣を持たない日本人は、朝夕の通勤ラッシュも相まって午後になると疲れがどっと出て集中力が低下し、業務効率が下がる。

 もちろん業種差や個人差もあるが、疲れを感じたときに仮眠をとって生産性が向上するならば、そういう働き方に変えられないのか、少なくとも朝夕の通勤ラッシュを回避できないのか―。そのとき、青二才なりに働き方改革を夢見たことがある。

テレワークを継続

 時を戻そう。コロナ禍と第5世代移動通信規格5Gの整備を機にテレワークを継続しようという中小企業は増えていると聞く。

 東京商工会議所が2020年6月に発表した「テレワークの実施状況に関する緊急アンケート」によると、第1回の緊急事態宣言が発出された期間を経た東京における中小企業のテレワークの実施率は67.3%で、緊急事態宣言の発出前の26.0%と比較し2.6倍も増加していた。

 業種別では製造業が70.7%、サービス業が68.4%で、従業員規模が大きくなるに従い実施率は高かった。

 ところが、同会議所が21年12月に発表した「中小企業のテレワーク実施状況に関する調査」によると、同テレワーク実施率は31.2%と半減していた。また、テレワーク実施中であってもテレワーク率(一日当たりにテレワークを実施している社員の割合)が40%以上と回答した企業は2割にも満たなかった。

 アフターコロナも継続してテレワーク率60%と意思決定している大企業に比べて、かなりの温度差が見られる。製造業などでは生産現場が時短操業から通常操業に戻りつつあり、現場との連携が必要になってきたという事情もあるようだ。

メタバースの活用

 一方、テレワークで通勤時間とストレスが激減するとともに、オンラインコミュニケーションによる生産性の向上で働き方改革が進み、若年社員の満足度が向上しているとも聞く。スマートフォン世代の彼らはリテラシー能力に長けており、仮想現実(VR)/拡張現実(AR)を駆使したメタバース(アバターを介して人々が交流しビジネスするバーチャル空間)にも関心があるようだ。

5G×メタバース(VR/AR)によるバーチャル連携(テレワーク)

 例えば、メタバースを活用し現場とバーチャル空間で連携したテレワークなどの可能性も出てくる。そうした環境構築にはローカル5Gの整備が不可欠だ。アフターコロナのデジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル変革)の一つとなる新たな働き方改革は、若い力がけん引するだろう。(つづく)

 〈筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問。グローバルベンチャー協会理事。国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏〉