2022.03.02 私たちの胃袋を支える弁当工場に「朗報」使いやすいロボット技術を三菱電機が開発
エッジ形状を活用した業界初の マーカーレスAR初期位置合わせ手法(写真提供=三菱電機)
音声入力で作業プログラム
さまざまな業界でロボットが活用される中、お弁当やお惣菜といった食品工場などでは、ロボットは意外に使われず、人手による流れ作業に頼る例が多い。映画にもなった桐野夏生さんの小説「OUT」は、弁当工場で深夜まで働く女性たちをめぐるドラマだったが、作品が発表された90年代から、そうした現場の大変さは続いているようだ。
一番の要因はコスト。メニューが頻繁に変わるし、その内容も複雑。たとえば、決まった数の唐揚げを容器の決まった場所に盛り付けるだけならまだいいが、途中で数を変えたり、盛り付ける場所を変えたりしないといけないこともある。こうしたことをその都度、ロボットに教えるのは大変だ。結局、人が作業した方が早く安い、ということになる。
同様のことは、荷物の仕分けなどを行う物流センターでも見られる。ただ、どの業界も人手不足。特にこうした現場は人手不足が深刻になっている。
そこで、三菱電機は、専門知識がなくても、ロボット向けの動作プログラムを作れて、作業速度も人と同等にできる「ティーチングレスロボットシステム技術」を開発した。これは、同社のAIや、ロボット動作の技術などを組み合わせて実現した。
開発された一つが、高精度な音声認識AI。たとえば「弁当箱の〇〇の場所に唐揚げを三つ詰めて」などと、盛り付け作業を声に出せば、ロボットのプログラムが自動生成される。「強い方言などでなければ、まず問題なく認識できる」という。専門家がプログラムを組んだりしなくても、立ち上げることができる。
作業速度も人間並みに速くできるほか、物を置く位置がずれれば自動で補正できる。たとえば、盛り付けがずれてしまいそうなら修正できるという形だ。製造業の現場では、多品種少量生産が増えており、同社は今後、「ゲーム機など電機・電子関連の場面でも活用してもらえる」と期待する。
業界では、食品工場でも使いやすいこうしたロボット開発の取り組みが、ほかにも進んでいる。現場の朗報になることが期待される。
(3日の電波新聞・電波新聞デジタルで詳報します)