2022.03.08 日本郵船 洋上風力向け事業、秋田で注力 船舶関連ニーズ拡大見据え

日本郵船と秋田県の協定締結式。秋田県庁で開かれた(提供=日本郵船)

洋上風力発電向けの作業員輸送船(提供=日本郵船)洋上風力発電向けの作業員輸送船(提供=日本郵船)

県と連携協定、拠点支店を開設

 海運国内最大手の日本郵船は、洋上風力発電の開発地として期待される秋田県での事業に注力する。導入に向けた動きが本格化する中、同県と再生可能エネルギー事業の推進などを柱とした包括的な連携協定を2月に結んだ。また、東北地方で初となる支店を4月に秋田市に開設。船舶関係を中心とした洋上風力ビジネスの広がりを見据え、関連人材の育成などに乗りだす。

 秋田県沖の海域は風速が毎秒7~8メートル程度あり、国内で風況が最も良好な地域の一つとされる。洋上風力発電の海域利用の統一的なルールをまとめた再エネ海域利用法に基づき、同県の沖合50メートルまでの2区域で、海底に固定する着床式を実際に開発する事業者が2021年12月に決定。いずれも三菱商事や中部電力グループ企業などを含む共同事業体が選定されている。

 また、同県「八峰町及び能代市沖」も同法の促進区域として21年9月に指定を受けて事業者の公募が行われ、今年後半にも事業者が決定するとみられている。

 具体的な計画がほかにも浮上しており、まさに国内での開発の先頭を走る地域の一つだ。「まだ導入可能な余地が十分に残っている」(洋上風力発電関係者)として期待も高い。

 日本郵船が秋田県と結んだ協定は、再エネ事業の推進やその人材育成などを中心に、船舶や港湾、観光振興や環境保全活動全般など多岐に及ぶ包括的な内容。太陽光パネルの拡大なども視野に入っているが、「重きを置くのが洋上風力」(同社)だ。

 沖合に開発される洋上風力では、設備の建設や発電開始以降に必要なメンテナンスのため、港などの陸上拠点と開発地を結ぶ船舶などが欠かせない。同社が地元の事業者などと連携を進めてきたのは、作業従事者らを送り迎えする「作業員輸送船」の運営事業。洋上施設に安全に乗降できる設備を搭載した船舶で、21年4月から曳船会社「秋田曳船」(秋田市)と協業を検討するなどしてきたという。

 日本郵船は秋田県と協定を結んだ日に、東北地方で同社グループ初となる秋田支店の開設を発表した。同社の国内5支店目になる。

 グループ会社が運営するクルーズ船「飛鳥Ⅱ」が秋田市の秋田港に年に数回、寄港するなど、これまでも関連が深かった。新たに支店を設けて東北地方の拠点とし、洋上風力関連事業での営業体制を強化する。営業は4月から始める。

 洋上風力開発が盛んになれば、特殊な作業などで欠かせない専用船のニーズも増してくる。その一つが、海底地盤の強度を試験できる調査船。風車を建設する基礎構造物の設計などに必要で、地盤にドリル状のものを圧入するなどして、地盤の固さや水圧など地盤の強度をテストする。

 また、エレベーター設備を持つ専用の台船も必要で、風車建設に使う重機や部品を港湾から洋上まで輸送するほか、発電装置の設置作業でも用いる。気象条件などにかかわらず、安定した作業が行えるという。

 こうした専用の船舶を日本郵船はまだ所有しておらず、「先行している欧州企業などと提携して、(専用の船舶の)共同運航を検討していく」(同社)。