2022.05.03 ボイラー制御システム、年間3万トンのCO₂排出削減木質ペレットと石炭混焼発電で最適化、出光興産と郵船グループ

ボイラーを制御して燃料を削減できる「アルティ ヴイ プラス」

 石油元売り大手の出光興産は、海運最大手の日本郵船グループと設立した販売会社のボイラー制御最適化システムが、石炭と木質ペレットの混焼による発電で1%超の燃料削減を実現したと発表。年間で約3万トンの二酸化炭素(CO₂)排出削減効果を見込む。

 同システムは「アルティ ヴイ プラス」。発電所や工場などで、化石燃料を使うボイラーに装備して、蒸気圧力や投入する燃料量を調整する。組み込んだ人工知能(AI)によって計測、分析、判断の一連の動作を装置内で完結して自動制御し、ボイラー燃焼を安定させ、燃焼効率を向上させる。

 幅広いボイラーを対象とし、燃料も重油やガスなど多種に対応。特に、化石燃料の使用量の削減により、排出するCO₂抑制に大きく役立つのが売りだ。

 出光興産と郵船グループが装置を開発。出光50%、郵船グループ50%を出資する販売会社「郵船出光グリーンソリューションズ」(東京都品川区)を2019年3月に設立し、中国、台湾、ベトナムなどへの販売強化に乗り出している。これまでに世界で石炭ボイラーなど向けに100基以上の導入実績を持つ。

 稼働中の中国電力の新小野田発電所(山口県山陽小野田市)に導入した設備で、燃料の石炭を1%超削減できることを確認した。同発電所には、石炭に木くずなどの木質ペレットを8%混焼させて発電している設備があり、その設備にボイラー制御最適化システムを装備したところ、燃料石炭の1%超を安定的に削減できたという。木質ペレットを石炭に混焼させた場合、熱量の違いなどから発電効率の低下が懸念されたが、発電量を低下させずに燃料を削減できた。

 出光興産は「1%削減でも母数が大きい。膨大な燃料を使用するため、企業などにとってコスト面の影響は大きい」と期待する。

 重油や天然ガスなどの燃料を使う設備では0.5~1.5%の燃料削減を実現していたが、今後の拡大が見込まれるバイオマス混焼設備でも効果を裏付けた。

 同社はCO₂削減に効果があるとして、木質ペレットを蒸し焼きするなどしてバイオマス燃料化した「ブラックペレット」の製造、販売を本格化させている。化石燃料を使う企業などにニーズがあると見て、ブラックペレットと組み合わせて、ボイラー制御最適化システムを普及拡大させていく方針だ。「化石燃料を使う企業向けに環境ソリューションの一つとして提案していく」(同社)。