2022.06.29 【九州・山口版】しくみデザイン スプリンギンで注目

中村社長(福岡市博多区の同社オフィスで)

直感的な操作が特長のスプリンギン直感的な操作が特長のスプリンギン

 みんながクリエーターになればいいのに--。そんな一人のクリエーターの思いから生まれたアプリが今、注目を集めている。

「誰もがクリエーターに」目指す

 しくみデザイン(福岡市博多区)の「Springin'(スプリンギン)」は文字を使わず、直感的な操作でゲームや動く絵本などのデジタル作品を作れるスマートフォン向けアプリ。5月現在で98万ダウンロードされており、約10万人がスプリンギンを使って創作活動に励んでいる。

 「誰でも簡単に表現者になれるツールを作りたいと思ったのがきっかけ」と中村俊介社長は話す。

 中村社長は九州芸術工科大学大学院(現在の九州大学芸術工科研究院)に在学中の2000年代前半から、メディアアートの制作に取り組んできた。

 同社を立ち上げたのは05年2月。体を動かして音楽を演奏できる拡張現実(AR)楽器「KAGURA(カグラ)」をメインに、イベントやライブなどでのエンタメサイネージの受託事業を手掛けた。

 高い技術力が評価され、カグラは14年に米インテルのコンテストで受賞。しかしスマホやタブレットが主流になる中、パソコンを使うカグラは思うように伸びなかった。

スプリンギン誕生へ

 その後、中村社長はタブレットを使って音が鳴る絵を作れるアプリ「paintone(ペイントーン)」を制作。改良し、17年にリリースしたのがスプリンギンだった。

 しばらく1万程度で推移していたダウンロード数は19年夏、突然8倍に。小学校でのプログラミング教育の必修化が決まる中「使いやすいツールがある」と教員の間で話題となったからだった。

 教材として使う学校も現れ、現在では全国の約300校が利用。学んだことをクイズにして発表するなど、新たな学習法として好評となっている。

 現場のニーズに応えるべく、昨年には教育用パッケージサービス「Springin' Classroom」の提供も始めた。

 一方、「子どものものというイメージは脱却したい」と中村社長は言う。

 スプリンギンは各種コンテストを開催するほか、幅広い業種の企業とも積極的にコラボする。広告効果にもつながると好評で、ユーザー参加型のイベントでは幅広い世代が自慢の作品を投稿している。

 「誰にでも〝創作欲〟はあるはず。テクノロジーでそれに応えたい。スプリンギンを、クリエーターたちのプラットフォームにしていけたら」と中村社長は話した。