2022.07.27 新国立競技場の舞台裏最先端の照明、ネイマールのサインも
高さ約40メートルからフィールドを照らすLED投光器。オリンピックモード時は日中のような明るさになる
東京五輪から1年。メイン会場として建設された新国立競技場(東京都新宿区)のバックヤードが26日夜、報道陣に公開された。照明施設をはじめ、選手ロッカーや貴賓室など普段目にすることのない「聖地」の舞台裏に迫った。
新国立競技場にはLED投光器約1300台が屋根の先端に設置されている。プレーヤーや観客に見やすいことはもちろん、世界に高画質映像を配信するため世界最高水準が求められるスタジアムの照明。LED投光器を納入したパナソニックは、NHK放送技術研究所と共同で、高精細な4K・8K放送に対応するため、照明の光による見え方の違いによって生じる映像の色差を極力抑えた高演色光源を開発した。
これにより青色から発光させる白色LEDの欠点とされていた赤色もクリアに見えるようになった。
スポーツ中継のスーパースロー映像でも、電圧などの影響で生じる不快なちらつき(フリッカ)が発生しない電源装置を開発。3%以下であればスーパースロー撮影時でもちらつきが起きないとされるフリッカファクター基準の1%以下に抑えた。
こうした技術が集積されたナイター照明は、陸上やサッカーといった競技団体の基準に合わせた照明に切り替えることができる。報道陣には陸上、サッカー、オリンピックの3モードが実演された。
オリンピックモードは太陽光の光に近く、フィールド全体で日中の屋外のような明るさで照らす。陸上モードは明るさをやや落とし、競技に適した照度でフィールド全体を包む。サッカーモードは、トラック内側の中央部分を明るく照らし、陸上競技用トラックは薄暗い状態。
パナソニックの担当者は「五輪のメイン会場だったため、競技に必要な照度以上の明るさを生み出す能力がある」と説明した。
照明の保守管理などを行う天井裏のキャットウォーク(細い通路)では、LED投光器の設置場所を見学。高さ約40㍍からフィールドや大型スクリーンを見下ろすことができるが、高所が苦手な人は注意が必要だ。
貴賓室に足を運ぶと、高級感あふれる椅子が特別な空間を演出。フィールドを正面から見渡すことができる観戦席では、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長も競技を楽しんだという。
スポーツ選手が利用する更衣室には、木材を活用した円形のロッカールームが設けられている。廊下の壁には、サッカーブラジル代表、ネイマール選手ら世界的プレーヤーや日本代表選手の直筆サインが直接書かれ、記念スポットになっている。
国立競技場では、貴賓室など一部を除く見学ツアーも実施している。