2022.07.28 【半導体/エレクトロニクス商社特集】急成長する中国半導体産業技術レベル向上で最先端に迫る

急成長する中国半導体産業

ハイシリコンのSoC「Kirinシリーズ」ハイシリコンのSoC「Kirinシリーズ」

イノサイエンステクノロジーのパワー半導体イノサイエンステクノロジーのパワー半導体

YMTCが6月に発表したSSD「PC300シリーズ」YMTCが6月に発表したSSD「PC300シリーズ」

 中国の半導体産業が成長を続けている。技術レベルの向上が目覚ましく、半導体製造を支える装置の国産化も進む。日本のエレクトロニクス商社も中国製半導体に注目し、販売を始めるところが増えてきた。

 米国と中国の関税を巡る報復合戦から始まった米中貿易摩擦は、通信機器企業のZTEやスマートフォンメーカーのファーウェイ(華為技術)など中国企業の米国市場からの排除、半導体や半導体製造装置の対中輸出禁止へとエスカレートした。現在は、ハイテク分野における両国の覇権争いにまで進んでいる。中国政府は2015年に国家戦略として「中国製造2025」を発表し、「製造大国」から先端技術による「製造強国」への転換を進めている。この国家戦略の大きな柱になっているのは半導体産業の育成で、国産化を進めるために巨額な投資を続けている。

 米中貿易摩擦は中国の自立自強を促す結果となり、20年以降、半導体デバイスや材料の国内化が加速し、それまでのレガシーな製造プロセスから微細化の技術革新など技術レベルの向上が目覚ましい。

 また従来のディスクリート系のみならず、さまざまな製造プロセスが開発されて製品も多様化している。最近はパワー系も強化し、中国政府は21年8月に、「第3世代半導体」に位置付けるSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)をはじめとしたパワー系半導体の研究開発と生産に25年までに10兆元(約169兆円)の投資を決定している。

 技術水準の向上が目覚ましく、世界の最先端に迫る。中国最大手の半導体サプライヤーであるHiSilicon(ハイシリコン=海思半導体、深圳市)はファーウェイ傘下の半導体や集積回路の設計を行うファブレス企業。ファーウェイ製の携帯電話向けのSoCである「Kirinシリーズ」のほか、IoTや5G関連の製品を製造する。Krinシリーズはクアルコム社のCPU「スナップドラゴンシリーズ」と性能は同等と評価されている。

 Will Semiconductor(上海ウイルセミコンダクター=上海韋爾半導体、上海市)は半導体画像センサー大手の米オムニビジョンのグループ会社で、ウエアラブル、医療向けの半導体デバイスの設計を行っている。「中国シリコンバレー」として知られる上海張江ハイテクパークに本社を置き、仙台市内に研究開発センターを設けた。Sanechips(ZTEマイクロエレクトロニクステクノロジー=中興微電子技術、深圳市)は、中国有数の通信IC設計会社として通信ネットワーク、スマートホーム、産業アプリケーションなどの通信チップ開発に重点を置くファブレス企業。長年にわたって「中国トップ10集積回路設計企業」に選ばれている。

 メモリーの中国最大手YMTC(長江メモリー=長江存儲科技、武漢市)が、6月に発表したSSDのPC300シリーズは第3世代3Dフラッシュメモリーチップを採用する。PCIe4.0、NVMe1.4などのインターフェースプロトコルをサポートし、読み取り速度最大3900メガバイト秒、最大容量1テラバイトのハイスペック製品になっている

 総合半導体メーカーSilan社(シランマイクロエレクトロニクス=杭州士蘭微電子、杭州市)は、自社Chipを使用したMOSFET、IPM、IGBTモジュールといったパワー半導体や自社MCUとDSPを使用したAudio用SoC、音声認識ICなどを開発、製造している。21年には12インチウエハーラインでの生産をスタートした。

 CXMT(チャンシンメモリーテクノロジーズ=長鑫存儲技術、合肥市)は、DRAMを専門とする設計・製造企業。12インチウエハーファブで生産している。

 このほかナノコアマイクロエレクトロニクス(納芯微電子、蘇州市)は高性能、高信頼性アナログ、ミックスドシグナルチップ、高絶縁電流センサーなどを得意とするファブレス企業で、同社の高絶縁電流センサーは外部絶縁部品を必要とせずに正確な電流測定を提供している。SSGセミコンダクター(世晶半導体、深圳市)は半導体デバイス、IC、コンピューターハードウエアを独自に開発・開発し、深圳、北京、台湾、青島にオフィスを構えている。イノサイエンステクノロジー(英諾賽科科技、珠海市)はパワー系GaN(窒化ガリウム)の研究開発と工業化に取り組み、世界最大の8インチGaNウエハーの生産能力を擁すると言われる。

 CSIA(中国半導体工業会)によると、こうしたファブレス設計企業が中国内には北京、上海、深圳、無錫、杭州、西安、成都、南京、武漢、蘇州、合肥、夏門といった都市に大企業から個人事業まで約3000社を数えるという。これらの企業が中国最大手のファウンドリー(半導体受託製造)、SMIC(中芯国際集成電路製造)などの生産を委託している。

エレクトロニクス商社の対応

 中国製半導体に、日本のエレクトロニクス商社は「品質レベルが問題」「最先端は難しい」といった認識から、調達には慎重だった。

 しかしEV、5G、AI、IoT、カーボンニュートラル、DXなど新たな時代の変化を背景にエレクトロニクス製品の需要が底上げされたことで、半導体の需給バランスが崩れ供給不足が深刻になっている中で、不足解消のために中国サプライヤーに目を向ける企業も増えてきた。

 丸文はGOWIN Semiconductor(ゴーウィン社、広州市)と販売代理店契約し、FPGAの販売を始めている。菱洋エレクトロはパワー系を中心に中国製半導体の取り扱いを広げている。Silan(杭州士蘭微電子、杭州市)、イノサイエンステクノロジー(英諾賽科科技、珠海市)、Global Power Technology(泰科天潤半導体科技、北京市)、Quectel Wireless Solutions(上海移遠通信技術、上海市)などを扱っている。