2022.08.03 【コネクター総合特集】 サプライチェーン確保に全力調達力強化や代替品提案

 コネクターメーカー各社は、市場での半導体・原材料不足の長期化や、物流逼迫(ひっぱく)などによるサプライチェーンの混乱が続く中で、顧客への安定供給体制確保への取り組みに全力を挙げている。各社は、旺盛な需要に対応するための生産設備増強を進めるとともに、部材調達の強化や代替品の提案などにも力を注ぐことで、グローバルサプライチェーンの維持・拡大に努める。

 コネクター市場では、2021年以降、コネクター製造に必須の高機能樹脂や金属材料などの入手難が深刻化し、材料価格の上昇も顕著となっている。

 特に成形工程などに必要な機能材料は、21年以降、ポリアミド(ナイロン)系樹脂や液晶ポリマー(LCP)などのスーパーエンプラの供給不足が深刻化した。

 ポリアミド系樹脂の需給逼迫の背景には、IT機器や自動車関連などでの急速な需要増の影響に加えて、21年2月に米国で発生した大寒波の余波で、化学メーカーの工場が集中するテキサス州で長期間の停電が発生したことが大きく影響している。この停電により、ポリアミド系樹脂の原料であるアジポニトリル(ADN)およびADNから生成されるヘキサメチレンジアミン(HMDA)メーカーの製品が供給不足に陥り、HMDAを使用する「PA66(66ナイロン)」や「PA6T(6Tナイロン)」などの樹脂の生産が影響を受けたことが、コネクターメーカーの調達にも大きな影響を与えた。

 このため、コネクターメーカーでは、サプライヤーとの連携によるグローバル調達力の強化を図るとともに、HMDA不使用のポリアミド系樹脂への代替、さらにLCPやPPS(ポリフェニレンサルファイド)などの非ポリアミド系スーパーエンプラへの代替提案などを推進したが、LCPなどについても、需給が逼迫し、入手難とともに価格高騰が進展した。

 直近では、一時期に比較するとスーパーエンプラの入手難状況はやや緩和傾向とされるが、過去2年ほどの間に複数回のスーパーエンプラの値上げが実施され、現在も高止まり状況が続いている。

 金属材料についても、20年以降、旺盛な需要を背景に、さまざまな金属材料の需給が逼迫し、さらに今年2月のロシアのウクライナ侵攻の影響もあり、今春には銅、ニッケル、金などの貴金属相場が高騰。コネクターに多用されるリン青銅などの供給不足も深刻化した。貴金属相場は、今年4~5月ごろをピークに、その後は下落基調となっているが、コネクター用材料の価格は高止まりし、製造コストの上昇を招いている。

 材料費高騰に対処するため、一部のコネクターメーカーでは、部材調達体制を見直し、中国など海外サプライヤーの発掘・切り替えを進めた企業もあるが、今春以降の為替の急速な円安進行が、輸入部材の価格高騰を招くなど、厳しい状況が続いている。

 金属価格が高止まりする中で、製造コスト削減に向け、めっき工程における省金めっき技術の開発や適用などを進めるコネクターメーカーもみられる。

 長期化が続く半導体不足に関しては、通常の電気コネクターへの影響はないが、光コネクターメーカーなどでは、光複合タイプのモジュールを製造する企業も多いため、直近でも半導体入手難の影響を強く受けているコネクターメーカーもみられている。

 一方で、半導体不足は、コネクター各社の供給先メーカーの生産に影響を与えるため、各社は顧客の生産計画などを迅速に収集するべく、顧客やディストリビューターとの情報交換の強化に努めている。

 さらに、グローバルでの物流逼迫状況も依然として続いているため、各社は顧客への安定供給体制確保のための取り組みに全力を挙げている。21年以降、納期順守のため、平常時よりもエア便(航空便)輸送のウエート増やしている企業も多い。顧客への安定供給のため、グローバルでの品目別生産体制を見直し、同一製品の複数生産化などを戦略的に進めた企業もみられる。

 電波新聞社がこのほど主要コネクターメーカー対象に実施したアンケートによると、「最近の半導体などの部品不足状況がいつごろまで続くか」の質問では、回答16社中、「22年末まで」としたのは3社にとどまり、半数の8社は、「23年以降に解消する」と回答した。うち3社は、「24年以降に解消時期がずれ込む」と回答している。

 「最近の物流逼迫による混乱状況がいつごろまで続くか」の質問では、回答16社中、「22年末まで」としたのは2社にとどまり、6割弱の9社が、「23年以降に解消」と回答した。うち「24年以降に解消時期がずれ込む」とした企業も2社みられている。

 また、米中通商摩擦の長期化も、グローバルサプライチェーン混乱の一因として、コネクターメーカー各社の事業活動に不確実性を与えている。

 「米中貿易摩擦の自社事業への影響」の質問では、回答16社中、最も多かったのは、「直接的な影響は受けていないが、間接的な影響を受けている」と答えた11社。「大きな影響を受けている」とした企業も1社見られた。「特に問題なし」と回答したのは1社のみだった。

 「米中貿易摩擦への対応策」の質問(複数回答)では、回答13社で、最も多かったのは「グローバルでの生産地変更を実施している」と「サプライチェーンの組み替えを実施している」で、それぞれ4社が回答した。

 現在のコネクターを含む電子部品市場を取り巻く環境は、さまざまなリスク要因が取り巻いている。ウクライナの問題は、直接的な影響を受けているコネクターメーカーはほとんどないものの、ウクライナ産の希ガスの輸出停滞が半導体市場に与える影響や、資源価格高騰への影響、欧州消費市場への悪影響、さらに、欧米系自動車メーカーやTier1などのロシア市場撤退に伴う需要構造の変化なども不透明となっている。

 また、中国でのゼロコロナ政策の長期化も、不透明要因の一つ。今年に入り、4月から5月にかけての上海市ロックダウンがコネクター各社の事業活動に大きな影響を与えたほか、今年2月から3月にかけての深圳市や東莞市のロックダウン、さらに、4月以降は無錫市のロックダウンも、サプライチェーンの混乱につながった。

 このため、各社は、グローバルリスクの早期把握に向け、社内外の情報共有化の強化を図り、市場や客先の変化に対する迅速な対応を図っていくための社内体制強化に努めている。各社は、生産・調達・物流などのあらゆる面でのオペレーションの充実化を図ることで、顧客に対する万全なコネクター供給体制の確保を目指す。