2022.10.03 【 炊飯器特集 】IoT機能搭載で新たな価値創出

ご飯のおいしさにこだわりを持つユーザーも増え、高機能・高単価の炊飯器が評価されている

 炊飯器は、コロナ禍で内食化が進んだこともあり、より炊き上がりのおいしいご飯にこだわりを持つユーザーが着実に増え、単価の高い機種が堅調に推移している。

 最近では、諸物価高騰の中で家庭の食卓にも変化が表れている。小麦価格の値上がりによって米消費が増えているため、炊飯器もより注目されそうだ。

 米価については、小麦とは逆に値下がり傾向にある。総務省の小売物価統計によると、今年8月時点で米5キログラム当たりの小売価格は、コシヒカリが前年同月比マイナス1.8%、これ以外の銘柄平均が同マイナス5.2%で、物価高騰の影響がまだ出ていない。

 タイガー魔法瓶が9月に行ったインターネット調査(n=328)によると、「小麦価格の高騰を理由にお米を食べる量を増やしたい」と回答した人が70.7%に上り、3人に1人が「朝食をパンからご飯に変更したい」と答えたという。

 米の消費が増えれば、炊飯器への関心も向く。この中で、おいしさにこだわりを持つユーザーも一定数いるとみられることから、引き続き高機能・高単価のIHジャー炊飯器の需要は堅調に推移しそうだ。

 炊飯器の高級ゾーンも業界全体は前年割れで推移するものの、高機能・高単価の商品の構成比は高まっている。一方、普及価格帯の商品の構成比も高まっており、市場では2極化傾向がうかがえる。

 炊飯器の商品戦略では、メーカー各社がおいしさを追求する中で、鉄・ステンレス・土・炭素材料などさまざまな素材を用いた内釜の開発や、より高火力に炊ける炊飯方式の改良、IHヒーターの進化など、高度な炊飯技術の開発が活発だ。

 メーカー各社が炊飯技術の基本に置くのは、日本人にとって、ご飯のおいしさの原点である〝かまど炊き〟にいかに迫るかという点だ。

 内釜の進化やIHヒーターの改良、少量からでもおいしく炊き上げられる最適な炊飯プログラムの開発など、各社さまざまな切り口で付加価値の高い商品戦略を加速している。

 さらに、炊飯器の付加価値化の方向の一つとして、IoT機能の搭載も増えている。IoT機能搭載により、銘柄米の出来栄えに応じて最適な炊飯プログラムをダウンロードできる、あるいは銘柄米の特長に合わせて炊き方をカスタマイズするといった炊飯プログラムのアップデートや、アプリでECと連携して米をオンライン購入する、さらに、離れて暮らす親などの炊飯器使用状況が分かる「見守り機能」といった新たな炊飯器の価値創出も進んでいる。

パナソニックの主力製品「おどり炊き」SR-VSX1シリーズ

購入後もおいしさが進化

IoT対応スチーム&可変圧力IHジャー炊飯器「おどり炊き」SR-VSX1シリーズ

     

 パナソニックは、炊飯性能をさらに高めるとともに、IoT対応で食の「くらしアップデート」サービスを提供することで、買った後でもおいしさを進化させるスチーム&可変圧力IHジャー炊飯器「おどり炊き」SR-VSX1シリーズを提案する。

 同シリーズには、「おまかせ見極め炊き」を搭載。米の状態を見極めて大火力IH、可変圧力、高温スチームの三つの要素を自動でコントロールして炊き分け、新米も、買い置きして乾燥した米も従来よりおいしく炊き分ける。

 IoTに対応し、「キッチンポケット」アプリと連携することで、その年の米の出来栄えに応じて炊き方を更新したり、銘柄を追加するなど、購入後もおいしさを進化させることができる。

 同社は2018年から米の鮮度を見極めておいしく炊き分ける機能を搭載してきたが、同シリーズでは、新たに「追い炊き」工程で米の状態に合わせてスチームの温度を変えることで、さらにおいしく炊き分けることができる。

 昨今、米の買い置きをする人が増えており、約9割が購入後2週間以上かけて米を消費している。一般的に精米された米は、常温で保存しておくと約2週間後には乾燥して鮮度が落ちる。

 このため、圧力センサーによる同社独自のセンシング技術により、米の状態に合わせて、水分量の多い新米の場合は250度の高温スチームで余分な水分を飛ばすことでハリを約10%アップし、乾燥した米の場合はスチーム温度を180度にすることで、パサつきや甘さの低減の抑制に加えて、みずみずしさも改善して炊き上げる。

 炊飯した後にご飯を冷凍保存する人が4割以上いることから、「冷凍用ごはん」コースも搭載した。冷凍・再加熱後もほぐれよく、粒の中まで柔らかいご飯になるように炊き上げる。

 以前から好評の「スチーム保温」も進化した。従来は保温開始から約6時間後と約12時間後の2回スチームを噴射していたが、同シリーズでは12時間後までに約10回噴射することで、保温中の乾燥を抑えて柔らかさを維持し、ご飯の黄ばみも抑える。

 キッチンポケットアプリと連携することで、その年の米の出来栄えに応じて炊き方の炊飯プログラムを更新したり、銘柄を追加し炊飯プログラムを配信するなど、購入後もおいしさを進化させることができる。