2023.01.03 【暮らし&ホームソリューション特集】’23年各社の戦略  富士通ゼネラル 中川陽介経営執行役常務

中川 常務

シェア回復で巻き返しへ
省エネを切り口に快適性も訴求

 2022年度に入ってからは、上海ロックダウンで思うように製品を出荷できず、夏のエアコン需要期に実質商戦に参戦できない状況となってしまった。今回の反省から、不測の事態に備えて生産を2カ国体制とした。またデバイスの保有在庫を増加し、計画よりも前倒しで生産するなど、製品供給に対するダメージを最小化する対策を打っている。

 こうした施策が功を奏し、10月以降はシェアを挽回してきている。為替も落ち着きつつあるが、ここ一年の急激な円安も影響して物価高となったことで、消費者マインドが下がっている。一方で、電気代の高騰による省エネ機種への注目度がかなり高まっている。環境に優しいという点も訴求力が増しており、付加価値の高い機種の引き合いが強まっている。

 製品については、省エネに加え、清潔や暖房能力といった基本性能を重視している。当社が12月から順次発売している高級機「ノクリア」Xシリーズと、Zシリーズの新製品には、従来の「熱交換器加熱除菌」を搭載するとともに、空気の通り道に対するカビ対策を強化した。除霜運転中でも暖房運転を継続する「バイパス暖房」も備え、ストレスになりがちであった、除霜運転によって暖房運転が止まる時間を1~2分に低減した。寒冷地仕様のエアコンにもバイパス暖房を搭載するとともに、高い暖房能力を実現したことで、好評を得ている。

 家電量販店の店頭では、分かりやすい暖房訴求を行っていく。以前のように暖房性能や快適性などの体感イベントを実施することは難しいが、オンラインによる製品研修会を積極的に開催し、新製品の良さが販売担当の方に伝わるようにしていく。動画でいつでも視聴できるようにし、製品に少しでも興味を持ってもらえるよう映像にも一工夫している。

 エアコンのIoT化も進んだ。IoT化でスマートフォンがリモコン代わりになってきている。近い将来、スマホのアプリのように、自身の使い方に合わせて、リモコンとして使う機能をスマホ上でカスタマイズできるようになるだろう。人工知能(AI)を使ってディープラーニングも進めており、夏前の試運転の提案などメンテナンス、アフターサービスに役立てている。

 エアコン需要は年間900万台前後が基礎需要になっている。今年もリプレースを中心に安定した需要が見込めるはずだ。半面、物価高などで購買意欲は若干低下するだろう。こうした環境下では、関心の高い省エネを切り口に快適性も備えたより良い機種の提案に力を入れていく。

 今年は、省エネ性、暖房性能、清潔性を強化した新製品を軸に提案を加速し、エアコンを通してユーザーの利便性向上やストレス軽減などに貢献していく。また、生活インフラ製品であるエアコンは品質力、サービスをさらに高めることで消費者の支持を得て、リプレース需要も確実に捉えていく。シェアを回復してきている現状に手応えを感じており、今年は巻き返していきたい。