2023.01.10 【製造装置総合特集】急成長する中国ロボット産業 日本、22年生産額1兆円超 欧州は世界的企業を擁する
急成長する中国ロボット産業
産業用ロボットの市場が広がっている。2022年10月に発表されたIFR(国際ロボット連盟)の「World Robotics 2022レポート」によると、21年に世界で出荷された産業用ロボットは51万7000台(前年比31%増)となり、過去最高を更新した。22年は約57万台(前年比10%増)を見込む。
中 国
中国はIFRのレポートでも世界最大市場で、22年の出荷台数は前年比51%増、約26万8000台となり、累計稼働台数は100万台を突破した。ロボット密度(製造業の従業員1万人当たりの普及台数)は322台となった。
中国は国家戦略の「中国製造2025」においてロボット産業を成長重点分野の一つに位置付け、ロボット産業の育成を図っている。
中国電子学会が発表した「中国ロボット産業発展報告書」によると、年平均成長率は18.3%を見込み、23年は590億元(約1兆1400億円)を予測する。
中国国内で産業用ロボットを生産している主要企業は120社以上といわれる。中国市場では日系や欧州系メーカーがこれまで70%のシェアを占めてきたが、中国企業が急速に成長している。国内最大のロボットメーカーとされる国営の瀋陽新松(SIASUN、瀋陽市)と広州CNC機器(GSK、広州市)、安徽埃夫特智能裝備(EFORT、蕪湖市)、南京埃斯頓自動化(ESTUN、南京市)がビッグ4といわれる。
瀋陽新松は日本はじめ世界市場に進出し、世界9位のメーカーに成長している。中国の工業・情報化部は「第14次ロボット産業発展5カ年計画」で、中国を25年までに世界のロボットハイエンド製造集約地に拡大することを目指している。
日 本
日本は中国に次ぐ産業用ロボットの最大の市場。IFRレポートでは21年の出荷台数は4万7000台(同22%増)だった。
日本は世界シェア10位に入るファナック、安川電機、川崎重工業、エプソンほか三菱電機、ヤマハ発動機など有力企業を擁するロボット生産国。
JARA(日本ロボット工業会)によると産業用ロボットの21年の年間受注額は1兆786億円(前年比25.6%増)と初めて1兆円を超えた。
総出荷26万1636台(同33.1%増)の80.9%を中国はじめ輸出で占めた。22年は生産額でも1兆円超を見込む。
JARAは22年10月に創立50周年を迎え、東京で開いた記念式典で山口賢治会長(ファナック社長兼CEO)は「ロボットはこれまでのものづくり現場のみならず、社会のさまざまな分野でのニーズへの対応に向けて活躍の場は一層広がるものと思われる。会員一丸となってロボット産業の発展に努力する」と述べた。
欧 州
欧州はIFRレポートで21年は約8万4000台(同24%増)が出荷された。自動車業界の需要が堅調に推移し、一般業界の需要も前年比51%増加した。世界の5大ロボット市場に属するドイツは欧州総設置台数の28%を占め、イタリアが17%、フランスが7%と続く。
欧州は世界市場シェア1位のABB(スイス)はじめストーブリ(スイス)、KUKA(ドイツ)、コマウ(イタリア)、ユニバーサルロボット(デンマーク)など世界的な企業を擁する産業用ロボット強国。KUKAは16年に中国の家電大手の美的集団に買収された。ストーブリは繊維機械用ロボット大手で、水平型多関節ロボットに強みを持つ。コマウは溶接用ロボットに強い。
国際オートメーション・メカトロニクス専門見本市「automatica」(メッセミュンヘン主催)がドイツのミュンヘンで22年6月に開催された。35カ国から574社が出展し、約75カ国から約3万人が来場した。東欧からの来場が増え、産業用ロボット市場の拡大を裏付けた。
米 国
米国は1954年にティーチングロボットの概念を発想した産業用ロボット発祥の国だが、ロボット密度は21年で世界9位の274台であり、必ずしも普及は進んでいない。IFRレポートの米国における21年の出荷は、前年比14%増の約3万5000台だった。
世界4大工作機械見本市の「IMTS」(AMT=米製造技術協会主催)が22年9月にシカゴで開催された。産業用ロボットはじめ世界から約2000社が参加し、開催6日間で約8万6000人の動員があった。