2023.01.16 【電子材料特集】クラレ タイ新工場完成、1Qから稼働 「ジェネスタ」の生産体制拡充

池森 執行役員

 クラレは、耐熱性ポリアミド樹脂「ジェネスタ」を事業化し、電気・電子分野のコネクター向けや自動車関連(車載電装/自動車耐熱部品)を中心に実績を拡大している。

 ジェネスタ(PA9T)は、同社が世界で初めて工業化したノナンジアミンを使用したポリアミド樹脂。耐熱性、低吸水性、耐薬品性など優れた特長を持つ。

 特長は①優れた耐熱性(融点306度と高く高温時物性に優れる。はんだ耐熱性270度)②低吸水性(①と②により表面実装時のブリスタ発生を防ぐ)③優れた摺動(しょうどう)性④優れた成形性など。これらの特性が評価され、年々販売規模を拡大している。

 池森洋二執行役員イソプレンカンパニージェネスタ事業部長は、ジェネスタ事業の動向や展望について「2022年度(12月期)は夏以降、スマートフォンやノートPCの在庫調整により電気・電子向けのジェネスタ販売も減少。23年度も第1四半期(1~3月)までは低調に推移しそう。自動車分野は22年度から好調に推移しており、特にEV(電気自動車)化やCASEの進展により販売も着実に伸びた。今後も自動車は高機能化に伴い機能デバイスの搭載量が増え、車載高電圧用途では耐トラッキング性(耐電気絶縁性能)が求められるため、ジェネスタの優れた耐トラッキング性が評価される」と話す。

 ジェネスタ事業では、世界10カ国・13拠点に販売や技術サービスの担当者を配置。国内ではCAE解析を行う「つくば研究センター」があり、顧客との共創を推進している。

 生産体制拡充ではタイ新工場が完成し、いよいよ第1四半期から稼働開始となる。国内では鹿島工場と西条工場の生産性向上にも取り組む。「タイ工場ではジェネスタの全銘柄が試作完了し、本格的に立ち上がる」(池森執行役員)とし、自動車関連はじめさらなる需要の取り込みを進める。

 新製品開発では、耐熱性をPA9T(ジェネスタ)よりも高めたナイロン系(PA系)樹脂の銘柄開発を行っており、顧客評価が進む。バイオ由来の銘柄開発も進めており、サステナブルな製品の供給に取り組んでいく。