2023.01.17 【半導体/エレクトロニクス商社特集】日本の半導体産業復活なるか 日本政府の半導体産業復活のシナリオ

ラピダスはimecと連携する。覚書調印式には西村経産相も出席したラピダスはimecと連携する。覚書調印式には西村経産相も出席した

「Beyond2ナノ」時代が到来 新たな挑戦が始まる

 日本の半導体産業の復活に向けて政府や産業界の動きが加速している。半導体はデジタル化、脱炭素化を支えるキーテクノロジーだが、米中の技術覇権激化、経済安全保障の観点からも重要性が増す。半導体産業は「Beyond2ナノ」と言われる次世代半導体の時代に入りつつある。失われた時代を取り戻し、Beyond2ナノ時代の日本の新たな挑戦が始まった。

 日本の半導体産業は1980~90年代にはLSIやDRAMを主力に世界シェア5割超を誇った。しかし日米貿易摩擦を解決する目的で締結された日米半導体協定による合計10年間の影響や、2000年に入ってDRAMは微細化の巨額な投資が必要なロジック(CPU)が主流となり、韓国・台湾の台頭によって徐々に競争力が低下した。

 日立製作所、NEC、三菱電機のDRAM事業を統合したエルピーダメモリが設立されたが、08年のリーマンショックやその後の円高不況により経営が悪化。国費を投入して支援を行ったものの12年に経営破綻した。

 先端半導体の分野では台湾TSMCや韓国サムスン電子、米インテルなどの海外企業がシェアを持ち、半導体産業全体においても日本のシェアは19年時点で10%まで低下した。

 その後も政府は半導体政策に無策だったが、米中貿易摩擦に端を発して半導体産業が世界の覇権争いの舞台となる中、日本の半導体産業復活に向け、21年6月に「半導体・デジタル産業戦略」が発表された。

 わが国の半導体産業復活の基本戦略として、25年までにIoT用半導体生産基盤として生産ポートフォリオの緊急強化や、日米連携プロジェクトで次世代半導体技術の習得・国内での確立に取り組む。30年までにはグローバルな連携による光電融合技術など将来技術の実現を目指す。

 21年11月にTSMCの熊本誘致を発表した。TSMCはソニーグループと熊本県に合弁会社を設立し、同県菊陽町にあるソニー子会社の工場隣接地に新工場を建設。24年末の生産開始を目指す。工場では回路線幅22~28ナノメートルの半導体を生産する。日本政府は当初の設備投資約8000億円の半額を支援する。

 TSMCは昨年6月、産業技術総合研究所と共同で「3DICセンター」を開設し、3DIC実装のための新材料・新プロセス技術の開発に関する共同研究を実施している。

 20年代後半の次世代半導体研究のため、22年5月に合意した、日米半導体協力基本原則に基づく新しい研究開発組織「技術研究組合最先端半導体技術センター(LSTC)」を同年12月に設立した。

 米国NSTC(National Semiconductor Technology Center)や海外の関係機関との連携を行う、国内外にオープンな研究開発プラットフォームを構築し、次世代半導体の量産実現に向けた生産の開始から終了までにかかる時間の短縮や、2ナノメートルノード以細の半導体に係る技術開発を進める。

 LSTC理事長には東哲郎ラピダス会長が就任。産総研、理化学研究所、東京大学、東京工業大学、東北大学、NIMS、物質・材料研究機構といった国内の主要な研究開発機関が参画し、日本全体の半導体関連産業の競争力強化を目指す。

 ラピダスはベルギーのマイクロエレクトロニクス国際研究機関であるimecと連携する。昨年12月にラピダスの東会長、小池淳義社長、imecのルク・ファンデンホーブimecプレジデント&CEOが出席して行われた覚書調印式には、西村康稔経済産業相とベルギー・フランダース政府のヤン・ヤンボン首相が立ち会った。両政府は両者の連携を支援する。