2020.01.23 温暖化対策でCCUS技術に注目 シンポやワークショップ相次ぐ

ワークショップでは、海外からの研究者も講演に立った

ワークショップの会場外では、関連機関がパネル展示して活動を紹介したワークショップの会場外では、関連機関がパネル展示して活動を紹介した

CO2を効率的に分離・回収・利用・貯留

 地球温暖化対策の重要な選択肢の一つとされる二酸化炭素(CO2)を回収(Capture)・利用(Utilization)・貯留(Storage)するCCUS技術についてのイベントが1月下旬、東京都内で相次いで開催された。

 CO2を他の気体から分離させて回収するコストなどが課題だが、経産省は技術開発を支援し、20年ごろの実用化を目指している。シンポジウムやワークショップで研究者らが先進事例などを報告した。

 23日に虎ノ門ヒルズフォーラム(東京都港区)で開かれた「CCSテクニカルワークショップ2020」には、国内外から約350人が集まった。

 CCSは、発電所や化学工場など大規模発生源から排出されたCO₂を分離回収し、地下深くに貯留する技術。すでに、米国とノルウェーで事業化されている。国内でも、北海道苫小牧市で本格的な実証が行われ、昨年11月に計約30万トンの圧入・貯留に成功したばかりだ。

 ワークショップでは、米国ノースダコタ大学のジョン・ハムニング氏が講演し、ノースダコタ州内などで民間企業などと進めるCCSや、古い油田に圧入してCO2を貯留しながら、残った原油を圧力で押し出す技術(EOR)を紹介。

 貯留するCO2の圧力などをモニタリングする技術の重要性を指摘し、「AI(人工知能)などで、自律的に行えるテクノロジーが鍵の握る」と語った。

 20日に東京大学(東京都文京区)で開かれたのは、「革新的CO2分離回収技術シンポジウム」。約300人が参加した。

 CO2を分離回収する技術に絞って紹介され、地球環境産業技術研究機構(RITE)が開発、研究を進めている「固体吸収材」などが取り上げられた。液体のアミンと呼ばれる化合物を固体に塗って活用する技術で、石炭火力発電所などの排ガスから低コストでCO2を分離回収できる。

 国内では他にも、樹脂の中にCO2を透過する膜をコーティングした「分離膜」もある。圧力を利用して分離回収する技術で、石炭をガス化して効率的に利用する石炭ガス化複合発電(IGCC)などで回収する。

 RITEの山地憲治副理事長・研究所長は講演で、環境技術の革新を、エネルギー転換や運輸、産業など分野ごとに図式化して検討。ビッグデータ解析やAI(人工知能)、ブロックチェーンといったデジタル技術などを「共通基盤技術」と位置づけ、「こうした技術が各分野でイノベーションを導いていく」と説明した。